2015.11.27

50%ルールは本当か?

今年に入ってから、税理士の関心は所得税に。
収入については所得分類で迷うことはあっても、
本当に問題なのは必要経費の判定でしょう。

つい先日、いわゆる仙台の弁護士必要経費事件
(鹿野事件)は最高裁で不受理が決定し、
一部取消しで確定しました。

東京高裁が示した

「弁護士が人格の異なる弁護士会等の役員等としての活動に
要した費用であっても、弁護士会等の役員等の業務の遂行上
必要な支出であったということができるのであれば、
その弁護士としての事業所得の一般対応の必要経費に
該当すると解するのが相当である。」

が支持されたのです。

他にも、自宅兼事務所の家賃が
必要経費に認められない判決も出たばかり。

http://www.derukui.com/2014/01/%E8%87%AA%E5%AE%85%E5%85%BC%E4%BA%8B%E5%8B%99%E6%89%80%E3%
81%AE%E5%AE%B6%E8%B3%83%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E7%B5%8C%E8%B2%BB%E3%81%A8%E3%81%97%E3

なんだか、必要経費の判定がブレてしょうがない
ような気がしますが・・・

先日ある税理士がこう言ってました。

「通達に50%ルールがあるから、
早い話、業務関連割合が50%超であれば
必要経費になるんでしょ?」

残念ながら違います。

もちろんこの規定は、50%以下であれば
必要経費にならない、としているものでもありません。

きちんと説明しておきましょう。

俗にいう必要経費における「50%ルール」とは、
下記通達のことを指しています。

所得税基本通達45-2(業務の遂行上必要な部分)
令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、
事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」
であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上
必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。
ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、
その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、
当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。

ここにいう施行令は、下記です。

所得税法施行令第96条(家事関連費)
法第45条第1項第1号 (必要経費とされない家事関連費)に
規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、
事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、
かつ、その必要である部分を明らかに区分することが
できる場合における当該部分に相当する経費

つまり、この施行令から解釈するに、
「家事関連費のうち必要経費にできる」部分は、

①業務の遂行上必要であること
かつ
②必要経費と家事費との区分が客観的に明確に区分できるもの

であり、この②の部分において、

「業務の遂行上必要な部分が特定できない場合に限って、
いわゆる50%ルールの適用がある」

と通達で規定しているのです。

あくまでも、「50%を超える=必要経費」
ではなく、特定できない場合に判別する基準を
作りましょう、というのが規定なのです。

また、通達の逐条解説(平成24版)を見ると、
この通達の趣旨はこうだと書いています。

「令第96条では、第1号で「主たる部分が業務の遂行上必要」
であることを条件としている一方、第2号では、
青色申告者に限って、「主たる部分」という制約を除外しているが、
主たる部分が業務の遂行上必要といえないとしても、
必要部分が区分できる場合には白色申告者だからといって
必要経費算入を認めないとするのは不合理となるから、
本通達は、実際上は、白色申告者についても青色申告者と
同様の扱いを受けることができることとしたものである。」

結局のところ、青色か白色かに限らず、
必要経費の判定は定量的割合だけで判別することは
できない、ということです。

税務調査で「50%ルールって通達に書いてる!」
と主張して通ったことがある税理士は多いと
思いますが、結果がラッキーなだけです。

間違った成功体験を信じると
後で問題になりますでのご注意ください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
※2014年1月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。