• HOME
  •  › ブログ
  •  › 退職金はどう決まるのか?
2015.04.23

退職金はどう決まるのか?

質問の内容はこのようなものでした。

(内容には私が大幅な修正を加えております)

【質問】

税務調査において調査官から退職金の否認指摘を受けました。
退職したのは社長なのですが、会社の経済的理由により、
最終月額報酬が0円だったので、平均功績倍率法から考えると、
退職金は0円となり、過大だいうものです。

さて、この否認指摘は正しいのでしょうか?
また、調査官に反論するためには
どのような論拠ですればいいのでしょうか?

まず法律の確認です。

法人税法施行令第70条第2項
内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した
退職給与の額が、当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、
その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人で
その事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等
に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると
認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額

としており、結局のところ、適正な退職金の額とは、
同業同規模他社と比べるしかないというわけです。

では具体的に、どのようにして同業同規模他社と比べて
適正な金額を計算するかというと、
判定基準は大きく2つあるとされています。

(1) 平均功績倍率法
(2) 1年当たり平均額法

ここで大事なのは、「平均功績倍率法」で算定するしかないと
思っていると、調査官に反論できないということです。
1年当たり平均額法も算定方法としてはあります。

さらに大事なことは、この2つの算定方法も、
あくまでも「同業同規模他社と比べて適正な金額を計算する」
ための算定(計算)手法であって、法律ではないということです。

事情があれば他にも算定方法はあります。
具体的には過去の判決の中にも「最高功績倍率法」を
採用した事例があるのです。

ここまで書くと、こう反論されそうです。
「そうはいっても、現実の実務の中では
平均功績倍率法を使うようになっている」と。

確かに平均功績倍率法が主流になっていますが、
これはあくまでも、平均功績倍率法で計算した方が
「合理的な方法だから」にすぎません。
より合理的な方法があるのであれば、
その算定方法を採用すればいいのです。

実際に納税者が勝っている昭和61年9月1日の裁決でも、

「適正退職給与の額を功績倍率法により算出すべきである
との原処分庁の主張を退け、1年当たり平均額法により
算出することが相当であるとした事例」

があります。

調査官の否認指摘論拠がいくら実務では
当り前のことであったとしても、その当り前を
疑ってかからなければならないのです。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2012年6月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。