2016.05.25

諸会費の必要経費性

※2015年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

年が明け、個人の確定申告の時期を迎えます。
今回のメルマガは、問題になりやすい
個人事業主(所得税)の「諸会費」です。

よく聞かれる質問に「ロータリークラブなどの
会費は必要経費になりませんか?」というものがあります。

ロータリー・JC・ライオンズに加入している理由として、
「仕事がとれる」というものがあります。

また、実際に(結果として)このような会に属して
売上になっていれば必要経費になり、
なっていなければ必要経費にならないのか?
という疑義も生じます。

昨年話題にもなったのでご存知の方も多いですが、
司法書士がロータリークラブの入会金及び会費を
必要経費として否認された事案が公開裁決で出されました。

「司法書士のロータリークラブ会費の必要経費算入を否定」
http://www.tabisland.ne.jp/news/news1.nsf/2a03c8904e6f853f492
564990021bb43/07fa47672ada54c149257d69007c046a?
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平成26年3月6日公開裁決
http://www.kfs.go.jp/service/JP/94/03/index.html

また、古い裁決ではありますが、
会計士・税理士がロータリークラブ年会費の
必要経費を否認された公開裁決も存在します。

昭和58年1月27日裁決
http://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0403130000.html

ロータリー・JC・ライオンズなどの会費は
必要経費として認められるのは相当難しいといえます。

もちろん、必要経費に算入したものを税務調査で
指摘された場合、「実際に売上に結び付いているじゃないか」
として、必要経費性を主張はしますし、それが
調査の現場で通ればいいのですが、出るところに
出てしまうと、必要経費性は否定されるでしょう。

また、上記のような会ではなく、いわゆる「同業者の集まり」
についても、親睦目的であれば必要経費にならない
ことが、多数の書籍に載せされています。
(「所得税必要経費の税務 平成26年版」など)

一方で、このような通達も存在します。

所得税基本通達37-9(農業協同組合等の賦課金)
農業協同組合、水産加工業協同組合、中小企業協同組合、
商工会議所、医師会等の組合員又は会員が法令又は
定款その他これに類するものの規定に基づき業務に
関連して賦課される費用は、繰延資産に該当する部分の
金額を除き、その支出の日の属する年分の当該業務に
係る所得の金額の計算上必要経費に算入する。

同業者の大部分が加入している同業者組合で、
会費の使途が組合員の事業の発展向上のためであるなど、
事業の遂行上直接必要なものであれば、
必要経費になる、と判断することができます。

税務調査において、諸会費が指摘された場合、
この通達を根拠に主張することが有効です。

また、歯医者の諸会費等(同窓会費、共済負担金、
英会話研修費、旅費交通費、同窓会主催旅行の参加費用等)
の必要経費性を争った公開裁決では、
すべて納税者が負ける結果となっています。

平13年3月30日裁決
http://www.kfs.go.jp/service/JP/61/12/

【要旨】
請求人は、同人が支出した諸会費等
(同窓会費、共済負担金、英会話研修費、旅費交通費、
同窓会主催旅行の参加費用等)は、請求人の業務の遂行上
必要な経費であるから、必要経費の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、支出した経費が、業務の遂行上直接必要である
場合はもちろんのこと、それが家事関連費であっても、
[1]その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、
その必要である部分を明らかに区分できる場合、及び
[2]青色申告であれば取引の記録等に基づき業務の遂行上
直接必要な部分を明らかにすることができる場合に、
それぞれその明らかな部分を必要経費に算入することが
できることとされているところ、請求人の主張する諸会費等は
いずれも家事費又は家事関連費と認められ、家事関連費に
該当するとしても、業務の遂行上直接必要な部分を
明らかにすることはできないから、これを
必要経費の額に算入することはできない。

簡単にまとめれば、事業関連性が曖昧な経費は
必要経費にならない、と判断されるということです。

確定申告前に顧問先には、「諸会費等は
必要経費として認めらない(可能性が高い)」
旨はきちんと説明しておく必要があるでしょう。

 

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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