2017.07.28

調査と実地の調査の違い

※2017年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

今回は、国税通則法にある「調査」と
「実地の調査」の違いについて解説します。

これを知っておかなければ、税務調査の手続きを
間違って認識してしまう可能性が高くなります。

さて、更正の請求をします。
その更正の請求が、そのまま通りました。
そうすると、「更正の通知書」が届きます。

では、この(減額)更正を受けた期間は、
国税通則法第74条の11第6項にある
いわゆる「再調査」の規定により、要件を満たさない限り
税務調査を受けることはないのか?という疑問がわきます。

※再調査の規定を知りたい場合は、こちらをご覧ください。

「再調査の要件」

まず、更正は下記のように規定されています。

国税通則法第24条(更正)
税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、
その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が
国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、
その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと
異なるときは、その調査により、当該申告書に係る
課税標準等又は税額等を更正する。

この規定では「調査により更正する」となっていますから、
更正の請求が通ったら、調査されていることになり、
その後は再調査にならないのでは?という解釈です。

ここにある「調査」と、国税通則法第74条の11にある
「実地の調査」は別、ということを理解する必要があります。

「調査」の定義は、下記通達に規定されています。

国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について
(法令解釈通達)1−1(「調査」の意義)
(1)法第7章の2において、「調査」とは、国税に関する
法律の規定に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は
税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく
処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為(証拠資料の
収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)をいう。
(2)上記(1)に掲げる調査には、更正決定等を目的と
する一連の行為のほか、再調査決定や申請等の審査の
ために行う一連の行為も含まれることに留意する。
(3)上記(1)に掲げる調査のうち、次のイ又はロに
掲げるもののように、一連の行為のうちに納税義務者に
対して質問検査等を行うことがないものについては、
法第74条の9から法第74条の11までの各条の規定は
適用されないことに留意する。
イ 更正の請求に対して部内の処理のみで
請求どおりに更正を行う場合の一連の行為。
ロ 修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は
源泉徴収に係る所得税の納付があった場合において、
部内の処理のみで更正若しくは決定又は納税の告知が
あるべきことを予知してなされたものには当たらない
ものとして過少申告加算税、無申告加算税又は
不納付加算税の賦課決定を行うときの一連の行為。

一方で、「実地の調査」の定義は下記です。

同通達3−4(「実地の調査」の意義)
法第74条の9及び法第74条の11に規定する
「実地の調査」とは、国税の調査のうち、当該職員が
納税義務者の支配・管理する場所(事業所等)等に
臨場して質問検査等を行うものをいう。

このように、再調査の規定はあくまでも、
一般的な税務調査のように、臨場・対面で
行われる行為のみが該当しますので、
更正の請求のように机上で行われた
(臨場がなかった)行為に対しては、
適用されないことがわかります。

実際に、国税の内規でも下記の記載があります。

税務調査手続等に関するFAQ(職員用 共通
平成24年11月 国税庁課税総括課)
問4−46 更正の請求書が提出され、当該請求内容につき
減額更正を行った後に、同一の年分について
質問検査等を行うことは、再調査に該当するのか。
(答)
更正の請求が提出され、その審査の過程で請求内容について
納税義務者に対し質問検査等を行い、結果として
当該請求内容どおりに減額更正を行った後に、
当該更正の請求があった税目・課税期間につき改めて
質問検査等を行う場合は、改正通則法第74条の11第6項
に規定する再調査に該当します。ただし、
更正の請求書が提出され、その請求に対して部内の処理のみで
請求どおりに更正を行う場合は、その後、
同一税目・課税期間につき質問検査等を行ったとしても、
再調査には該当しません(手続通達1−1(3)イ)。

調査手続きを理解するうえでは、「調査」と
「実地の調査」の違いは重要になりますので、
ぜひ理解しておいてください。

 

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