• HOME
  •  › ブログ
  •  › 裏金は誰に帰属するのか?(その2)
2018.05.25

裏金は誰に帰属するのか?(その2)

※2017年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「裏金は誰に帰属するのか?(その2)」ですが、

裁決(平成23年7月6日)を取り上げます。

今回の事例は直接的に裏金が誰に帰属するのか?という論点ではなく、

従業員による不正行為が請求人の行為と同視できるかどうかにつき、

争われた事例です。

前提条件を詳細に書くと複雑なので、主要な部分のみを抜粋します。

争点は2つあるのですが、このうちの「本件K取引は、

納税者である請求人の隠ぺい、仮装行為と同視することができるか否か」

について取り上げます。

不正取引の内容は「配送等代金の水増し、水増し分のキックバック」です。

これを本裁決では「本件K取引」と言います。

これに関する認定事実は下記の通りです。

〇Kは、e工場d営業所(現在のd工場)に採用されてから退職するまでの間、

f工場資材課の係長として約1年間勤務した以外はd工場資材課の一使用人

であった。

〇Kは、詐取行為を開始した平成11年11月以降依願退職するまで、

d工場資材課において各種事務である消耗材料の発注、検収及び

デッドストック処理等の一担当として従事しており、この間、

請求人の役員に就任していた事実はなく、職制上の重要な地位や権限を

与えられた事実もない。

〇経理課に勤務していたことはなく会社の重要な経理帳簿の作成等を

任されていた事実もない。

では、国税不服審判所の判断です。

〇本件は、Kが、Pをだまし、Qに指示して金額が水増しされた配送等代金を

消耗材料等とする虚偽の納品伝票を請求人宛に発行させる等の隠ぺい、

仮装行為をしたものであり、これらの行為は国税通則法第68条第1項

にいう隠ぺい、仮装に該当すると認められるところ、請求人は、

当該消耗品費の架空計上をした決算に基づき法人税の確定申告をしたものと

認められる。

〇しかしながら、(1)Kがd工場資材課に配置されて以後退社するまで

長期間にわたり同課において職制上の重要な地位に従事したことが

なかったこと及び請求人の経理帳簿の作成等に携わる職務に従事したことも

なかったこと等から同人が、d工場において単に資材の調達業務を

分担する一使用人であったと認められること、

また、(2)本件K取引が、K個人の私的費用を請求人から詐取するために

同人が独断でPに依頼して行ったものであり、当該隠ぺい、仮装行為が

請求人の認識の下に行われたとは認められないこと等を総合考慮すると、

請求人が取引内容の管理を怠り、請求人から隠ぺいするためのKの

仮装行為を発見できなかったことをもって、当該行為を請求人自身の

行為と同視することは相当ではない。

〇原処分庁の主張について

原処分庁は、請求人預け金を詐取する目的でKが行った伝票操作に

基づく請求人の会計処理を、d工場資材課において慣行的に行われていた

本件L社取引等のうち特に本件預け金取引という架空の費用を計上して

預け金を創出する会計処理を奇貨として行われたものであるから、

請求人自身による処理とみなさざるを得ない状況にあったとして、

Kの隠ぺい、仮装行為を請求人の隠ぺい、仮装行為と同視することが

できる旨主張する。

しかしながら、本件K取引に係るKの隠ぺい、仮装行為については

請求人の行為と同視することができないのであるから、

原処分庁の主張は採用できない。

ということで、重加算税の賦課決定が取り消されたのでした。

ただし、Kの行為が「偽りその他不正の行為」には該当するということで、

「更正の期間制限を徒過した違法はなく適法」とされています。

この事例は詳細な内容をご確認頂いた方がいいので、

是非、裁決文の全文をお読みください。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/84/03/index.html

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。