2016.12.26

裁決文のルールと読み方

※2016年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

本メルマガでは、税務調査・税務判断の指針となるべく、
多数の裁決事例を取り上げています。

その中でよく聞かれる声が「裁決文が長すぎて
どこを読めばいいのかわからない」というもの。

私は普段から多数の裁決文を読んでいますが、
裁決文には(昔の裁決を除き)、きちんと定められた
ルールがあることはあまり知られていないところです。

なお、このルールは平成26年6月に改正された
「行政不服審査法の改正に伴う国税通則法等の改正」
の中に含まれています。

国税不服申立手続きの制度改正も含めて、
詳細に知りたい方はこちらをご覧ください。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2014/explanation/pdf/p1107_1150.pdf

この改正により、裁決文に明確なルールが定められました。
(実務上は、数年前の裁決文からこうなっています)

国税通則法第101条第1項
(1)主文
(2)事案の概要
(3)審理関係人の主張の要旨
(4)理由

これが大きな項目の流れとなっています。
各項目をさらに詳細に解説していきましょう。

(1)主文

「全部取消し」「一部取消し」「却下」「棄却」
など、裁決の結論が記載されます。

(2)事案の概要

この項目には、下記が記載されます。

[1]概要
「本件は・・・」で始まり「・・・事案である」で終わる一文

[2]経緯
税務調査の内容等

[3]関係法令
処分の対象となった根拠となる税法の条文

[4]基礎事実
国税と請求人(納税者)で争いのない事実

[5]争点
双方の主張の相違点のうち、判断を必要とする項目
(なお、古い裁決文には記載がない場合が多い)

(3)審理関係人の主張の要旨

国税と請求人(納税者)のそれぞれの主張内容が
対比の形で記載されます。

明確な決まりはありませんが、通常は立証責任がある方が
先(左右に並べられる場合には左側)とされています。

(4)理由(法令解釈・認定事実・結論)

裁決文を読む際にもっとも注目すべきはこの部分に
なります。争った概要さえわかっていれば、
この部分から読み始めるのがもっとも効率的です。

法令解釈で争っている場合、不服審判所が
過去の判決・裁決を覆して判断することはあまりなく、
現実的には、最高裁の判例がある場合はそれを、
また過去の先例裁決(公開裁決)事例がある場合は
それを基準にすることがほとんど、と考えていいです。

逆に言うと、審査請求する際には、
過去に似たような判決・裁決を探し、
そこから大きく逸脱するような争いをしても
あまり意味がない、ということでもあります。

また、すべての裁決文ではないにしても
「あてはめ」という項目があれば、その項目を
さらに深く読む必要性があります。

「あてはめ」というタイトルではなくでも、
「判断」・「結論」という項目で、事実を
法令解釈をあてはめた【結果・結論】の判断が
ここに明記されるわけです。

ここ(結論)から読んでみることも、
効率的に裁決文を読むポイントです。

また、公開(先例)裁決事例を実際に見たい方は、
こちらをご覧ください。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/index.html

新しい裁決ほど、上記のルールに則っている
ことがおわかりいただけると思います。

裁決文にはルールがあることさえわかれば、
読むのにそれほど時間を要さないと思います。

ぜひ、上記を参考に裁決文を読んでください。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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