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2018.03.02

税務調査で代表者個人の情報を要請されたら何と反論するか?

※2017年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

税務調査の最盛期を迎え、私に対する質問・相談が
増えていますが、相変わらず多いのが
法人に対する税務調査にもかかわらず、代表
(やその親族)の個人に関する情報開示を
調査官から要請されるケースです。

もっとも典型例は、代表者個人の通帳を見せるよう
要請されることですが、それ以外でも、
妻のみならず親族全員の預金等、個人資産の動きを
書面で提出するよう求められるケースもあります。

調査官の「感覚論」「経験論」では、今まで
法人に対する税務調査において、代表者など
個人の情報開示を求めても、断られたことがない
からでしょう、あたかも当然かのように
個人の情報まで要請してきます。

このような要請があった場合なのですが・・・
そもそも論から解説します。

まず、法人に対して税務調査を実施する、
ということは、法人に対して
質問検査権を行使していることになります。

国税通則法第74条の2を見ると、
法人税に対する質問検査権の相手方は
「法人」と定められており、調査対象物は
「法人の帳簿書類その他の物件」となります。

ですから当然、法人の税務調査であれば
代表者といえど個人の通帳は質問検査権の
範囲外となることがわかります。

次に、税目や調査の対象物が事前通知される
ことになりますが、その際に対象物として
事前通知したのか、が問題となります。

通常は、事前通知段階で個人の通帳などは
指示されていないはずです。だとすれば、
事前通知の内容から調査範囲を広げるには、
別の法的要件が必要となります。
(国税通則法第74条の9第4項における
「非違が疑われることとなつた場合」)

このことから、(要件を満たさない限り)
個人の通帳を開示要請するのは
事前通知の法律にも違反していることになります。

このように法的根拠をもって主張・反論すると、
調査官の言い分は、常にこうです。

「個人の通帳に法人に帰属すべき金銭が
入金されている可能性があるので、個人の
通帳を見てみないとわからない、判断できない」

こう反論されたら、下記のFAQを見せてください。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
https://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm#a07
問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の
提示・提出を求められることがありますが、
対象となる帳簿書類等が私物である場合
には求めを断ることができますか。
(回答)
法令上、調査担当者は、調査について必要が
あるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、
これを検査することができるものとされています。
この場合に、例えば、法人税の調査において、
その法人の代表者名義の個人預金について
事業関連性が疑われる場合にその通帳の
提示・提出を求めることは、法令上認められた
質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。
調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が
必要とされる趣旨を説明し、ご理解を
得られるよう努めることとしていますので、
調査へのご協力をお願いします。

ここに記載あるとおり、まず調査官は
個人の口座などの情報を要請する場合、
「必要とされる趣旨を説明し、ご理解を
得られるよう努めることとしています」
を実施したのか、ということです。

さらには、あくまでも個人口座などに
質問検査権が及ぶのは
【事業関連性が疑われる場合】ですので、
何をもって事業関連性があるのか、
きちんと根拠をもって説明を求めることです。

もちろん、調査官が事業関連性を
適切に説明できない場合は、質問検査権は
及ばないものと判断して、個人口座などを
開示する必要性はありません。

法人調査における個人情報の開示要請は、
質問検査権を理解していれば、正当に
拒否できるものです。

上記の法的根拠を理解しつつ、FAQを
提示して、適正に調査対応をしてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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