2017.04.27

社員旅行の金額基準

※2016年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「社員旅行の金額基準」ですが、複数の裁決等を取り上げます。

私が節税セミナーの中で社員旅行のことを解説すると、

質疑応答でのご質問がよく出るテーマの1つがこれですが、

社員旅行は給与として課税される場合もあるので、注意が必要です。

では、具体的な裁決等の前に通達を見てみましょう。

(ここから)

所得税基本通達36−30(課税しない経済的利益・・・・・使用者が

負担するレクリエーションの費用)の運用について(法令解釈通達)

標記通達のうち使用者が、役員又は使用人(以下「従業員等」という。)の

レクリエーションのために行う旅行の費用を負担することにより、

これらの旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益については、

下記により取り扱うこととされたい。

なお、この取扱いは、今後処理するものから適用する。

おって、昭和61年12月24日付直法6−13、直所3−21「所得税基本通達36−30

(課税しない経済的利益・・・・・使用者が負担するレクリエーション費用)

の運用について」通達は廃止する。

(趣旨)

慰安旅行に参加したことにより受ける経済的利益の課税上の取扱いの

明確化を図ったものである。

使用者が、従業員等のレクリエーションのために行う旅行の費用を

負担することにより、これらの旅行に参加した従業員等が受ける

経済的利益については、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・

規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額

及び負担割合などを総合的に勘案して実態に即した処理を行うこととするが、

次のいずれの要件も満たしている場合には、原則として課税しなくて

差し支えないものとする。

(1)当該旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合には、

目的地における滞在日数による。)以内のものであること。

(2)当該旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で

行う場合には、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること。

(ここまで)

もちろん、ここには明確な金額基準はありませんが、過去の事例を

時系列で並べてみましょう。

なお、〇は納税者の主張が認められた事例、×は認められなかった事例です。

〇 岡山地裁(昭和54年7月18日)・・・×

・ ハワイ旅行(5泊6日)

・ 1人当たりの費用:約186,000円)

〇 京都地裁(昭和61年8月8日)・・・〇

・ 行先:香港(2泊3日)

・ 1人当たりの費用:約77,000円(会社が20,000円を負担)

〇 裁決(平成3年7月18日)・・・○

・ タイ(3泊4日)

・ 1人当たりの費用:約183,000円

・ 昭和63年10月1日から平成元年9月30日までの事業年度が

  対象になっているので、好景気の時代ではある。

〇 裁決(平成8年1月26日)・・・×

・ シンガポール(3泊4日)

・ 1人当たりの費用:約454,000円

・ カナダ(4泊5日)

・ 1人当たりの費用:約520,000円)

〇 裁決(平成10年6月30日)・・・×

・ 九州旅行(3泊4日)

・ 1人当たりの費用:約192,000円

〇 東京高裁(平成25年5月30日)・・・×

・ マカオ(2泊3日)

・ 1人当たりの費用:約241,000円

・ 元になった裁決は平成22年12月17日裁決

もちろん、「いくらまでならOK」という100%の明確な基準は

ありませんが、国税庁のホームページでは下記とされています。

https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2603.htm

結果として、高額すぎると否認される可能性が高いでしょう。

過去の事例は海外旅行が一般的か?ということも加味してみるべきですが、

上記の京都地裁(昭和61年8月8日)では下記と判示しています。

(ここから)

外国旅行は、昭和56年当時すでに特殊な人だけのものではなく

大衆化して来ており、その費用も国内旅行より低廉な場合もある(例えば、

門司より韓国の釜山への旅行)し、国内旅行以上にレクレーシヨン

としての効果が大きく、従業員の勤労意欲を高める面も強いことを

考えると、使用者の負担した費用が外国旅行費であるというだけで、

国内旅行費と全く異なつた取扱いをするのは相当ではない。

(ここまで)

当然ですが、「旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、

従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合など」

を総合勘案して決める項目です。

ただし、上記裁決等からも分かる通り、旅行代金が大きなウェイトを

占めることは明白です。

しかし、セミナー参加者からの質疑応答に回答していると、

税理士が適正なアドバイスをしていないと感じる場合もあります。

皆さんにお客様からご質問があったならば、

上記の金額等を参考に給与課税されない金額を提案することが重要なのです。

 

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