2016.05.27

研修費の必要経費性

※2015年1月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

今回も(個人事業主の)必要経費について書いていきましょう。

さて、税理士が税務に関する研修・セミナーを受講した
際の支出は、必要経費になるのは当然です。
ここは、異論がないところでしょう。

税理士にとっては、税務の研修が(有形ではない)
仕入であり、業務上不可欠だからです。

一方で、先週取り上げたとおり、
歯医者が歯科医師同士の研修費、もしくは
英会話学校を受講した授業料は必要経費として
認められなかった裁決が存在します。

平成13年3月30日裁決
http://www.kfs.go.jp/service/JP/61/12/

また、歯科医師が学位を取得するために
大学院の博士課程に通った入学金・授業料が
必要経費として認められなかった裁決もあります。

平成13年9月27日裁決
TAINS F0-1-152

この裁決では、学位を取得しなくても
歯科医業は遂行可能である、と判断されました。

「注解所得税法 5訂版」では、
「業務に間接的に有効、有益であっても
主たる目的が新しい地位、職業の取得とされる
場合には、必要経費と認められていない」
と記載されています。

結局のところ、必要経費になるかどうかは、
その「必要性」が問われるわけです。

税務調査では「必要性」をどこまで
客観的に主張・反論できるかが論点となります。

例えば、徳島地裁平成7年4月28日判決では、
歯科医が矯正技術を学ぶための研修費用に関して
争いましたが、必要経費と認められています。

このような支出は必要経費になるのが当然と
考えがちですが、裁判になっている以上、
税務調査で更正処分をされたことから考えると、
事情・背景、調査での説明の仕方によっては
否認されることがあるというのもまた事実です。

また、非常に面白い判決として、
東京地裁昭和53年2月27日判決があります。

この裁判は、民謡酒場で働く従業員に
民謡を習わせた支出を必要経費として争ったのですが、
趣味・娯楽と捉えられがちな民謡の習得費用も、
民謡酒場の営業収入を得るため事業遂行上
直接に要した費用として認められました。

さらにこの裁判で興味深い点は、民謡を
習う費用には、一般従業員だけではなく、
事業主の家族である従業員分も争点となっていて、
家族分も必要経費として認められていることです。

なぜその支出が、営業上必要なのかを
どのように説明するか、その点から
必要経費性を常に問う必要があるわけです。

例えば、客に外国人が増えたから
英会話を習うために学費を支出したとするなら、
普段から客に占める外国人比率をざっくりでも
算出しておけば、主張根拠としては強いでしょう。

個人事業主の顧問先・関与先には、
「こういう主張をできるような資料があるなら
必要経費に入れることができます」
という合意を取り付けておく必要があります。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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