2015.07.16

短期前払費用の要件

さて、今回は「短期前払費用の要件」です。

法人税基本通達2-2-14、所得税基本通達37-30の2で

いわゆる「短期前払費用」について記載されています。

この短期前払費用ですが、通達本文や逐条解説の解説文には

書いてありませんが、実際の現場における重要な考え方があります。

それは

○ 重要性の原則から考えて問題がないこと

○ 等質等量の役務提供であること

です。

前者は久保さんが主催されている「月刊 税務調査対策」のDVDでも

解説されていますが、要は財務諸表に対するインパクトの大きさです。

ちなみに、私は短期前払費用に関してかなり研究しているのですが、

そのきっかけとなったのは、この「月刊 税務調査対策」のDVDです。

これが非常に秀逸だったため、また、実際の現場でも短期前払費用は

よく使われるものなので、研究することにしたのです。

ちなみに、「月刊 税務調査対策」は下記からお申込み頂けるので、

是非、下記をご覧いただければと思います。

私も1人の会員として、毎月のDVDを楽しみにしています。

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「月刊 税務調査対策」

http://kachiel.jp/tax/measures/
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話を本題に戻します。

まず、「重要性の原則」についてですが、これは久保さんも上記DVDで

解説していますが、長崎地裁の判決(平成12年1月25日)が有名です。

また、その他の短期前払費用について争われた判決等でも

「重要性の原則」という言葉は繰り返し出てきます。

だから、TAINSやTKCのデータベースなどで1通り目を通されると

いいと思います。

ちなみに、TKCのデータベースで「『重要性の原則』&『前払費用』」と

検索すると、16件ヒットします。

なお、上場会社等の公認会計士の監査がある会社では、

この「重要性の原則」という観点から公認会計士に「前払費用として、

貸借対照表に計上してください」と指示されることがあります。

つまり、税務署ではなく、公認会計士に否定されてしまうのです。

だから、このような会社に提案する前には税務的な観点からではなく、

監査を担当する公認会計士にも事前確認しておくことも重要です。

それから、「等質等量」についてですが、今回はこれを重点的に解説したい

と思いますが、TKCのデータベースで検索すると、下記2件のヒットが

あります。

○国税不服審判所(平成16年3月24日)

所得税基本通達37―30の2で述べた前払費用とは、〔1〕一定の契約に

従って継続的に提供を受けること、すなわち、等質等量のサービスがその

契約期間中継続的に提供されること、〔2〕役務の提供の対価であること、

〔3〕翌年以降において時の経過に応じて費用化されるものであること、

〔4〕現実にその対価として支払ったものであることの4つの要件の

すべてを満たす費用と解するのが相当である。

○東京地裁(平成19年6月29日)

・本件通達は、企業としては、前払費用(一定の契約に基づき継続的に

役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時に

おいてまだ提供を受けていない役務に対応するもの)はその支出をする時

の費用に計上する経理処理を行っていることが多く、これらについて

厳密な期間計算を行って税務上別個の計算を行う実益を捨ててもさして

弊害がないと思われることから、企業におけるこれら期間損益の処理を

特例的に是認する取扱いであると解されるところ、その役務が等量等質の

ものではない場合には、時の経過に応じて収益と対応させる必要がある

ことから、本件通達による特例的取扱いは認められないものと解すべき

である。

・そこで、本件手数料について検討するに、本件手数料は、Nが原告に対し、

毎日、特殊景品を納入する業務に係る手数料であり、本件委託契約書では、

原告がNに対し、その納入に対する代価を現金で支払うことが約定されて

いるところ、その納入量及び代金額は、日々の業務内容により変動し、

原告及びNにおいて、毎日、あるいは一定期間ごとに、納入を必要とする

特殊景品の数量についての連絡や、その納入確認及び代金計算等が不可欠な

ものと推認されるから、本件手数料をもって前記(1)の等量等質の役務の

対価であると認めることはできない。

結果として、「等質等量」であることは重要なのですが、

税理士自身が「自分の顧問料の短期前払費用」を提案することがあります。

しかし、これは「等質等量」に該当しないので、注意が必要です。

実際、TAINSで「等質等量」と検索すると、下記がヒットします。

「法事例0709」 

顧問税理士に支払う顧問料については短期前払費用の特例を適用することは

できず、前払金として処理をする必要がある。

すなわち、前払費用の要件である「一定の契約に基づき継続的に役務の提供

を受けるために支出した費用」の「継続的に」とは、等質等量のサービスが

その契約期間中継続的に提供されることであり、顧問契約では、その時々の

状況に応じてサービスの提供を受けるのが一般的と思われることから、通常、

等質等量とはいえない。

いかががでしょうか?

繰り返しになりますが、「重要性の原則」、「等質等量」という言葉は

法令や通達のどこにも書いていないので、見落としがちな部分でもあります。

特に、税理士が自らの顧問料の前払いを提案し、否認されたのでは、

立つ瀬がありません・・・。

ご注意くださいね。

(見田村 元宣) 

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2013年3月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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