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2016.11.04

相続開始後の土地開発と広大地の関係

※2016年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「相続開始後の土地開発と広大地の関係」ですが、

平成16年6月28日の裁決を取り上げます。

広大地に該当すると考えた土地(相続財産)が売却された場合、

これを購入した業者は開発道路等を入れて戸建開発することが

基本的な前提です。

しかし、広大地として評価、申告した土地が売却後に開発道路を入れず、

敷地延長(旗竿地)の地形で分譲されたにも関わらず、納税者の主張が

認められた事例があります。

非常に貴重な事例なので、ここでご紹介します。

〇基礎事実

・本件土地の所在する地域は、都市計画法上は、市街化区域内の第二種

 中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)であり、財産

 評価上は、評価通達14(評価の方式)に定める路線価地域で、かつ、

 同通達14-2(地区)に定める普通住宅地区に該当する。

・本件土地は、その開発行為をしようとする場合、あらかじめ都市計画法

 第29条(開発行為の許可)第1項に規定する許可(以下「開発許可」

 という。)を受けなければならない土地である。

・■■■■は、本件土地のうち、■■市■■■■丁目■番■、同番■及び

 同番■の土地670.52平方メートル(以下「本件売却土地」という。)

 を本件相続開始日後の平成13年7月17日に■■■■■■株式会社

(以下「■■■■■■」という。)へ売却した。

そして、この土地が敷地延長で開発されたため、課税庁は「本件土地は、

開発行為を行うとした場合、公共公益的施設用地を設けない旗状の宅地

による開発が可能であるから、請求人らの主張するような道路を設ける

必要はない。現に、本件売却土地の相続の開始後の開発状況をみると、

公共公益的施設用地を設けない旗状の宅地による開発がされており、

本件土地のうち本件売却土地以外の部分についても同様の開発が可能である。」

と主張したのでした。

しかし、国税不服審判所は下記と判断したのでした。

〇認定事実

原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の各事実が認められる。

イ 本件土地は、JR■■■線■■■駅の北東方約900mに位置し、北西側

及び南東側がいずれも幅員約6mの公道に接面し、この二つの公道に

挟まれた間口24.10m、奥行55.70mの不整形な土地であること。

ロ 本件土地は、本件相続開始日現在駐車場として利用されていたこと。

ハ 本件土地の所在地周辺は、主に1画地が100平方メートル程度の

戸建住宅を中心に、マンション、倉庫、作業場等が混在する住宅地域

であるが、平成9年2月以降はマンションの新築はないこと。

〇本件土地の評価について

イ 相続税の課税財産の価額は、相続税法第22条により、当該財産の

取得の時における時価によることとされており、当該時価を評価通達の

定めに従い評価することは、納税者間の租税負担の公平等の見地から

合理的であると解されている。

ロ ところで、評価通達24-4は、上記1の(3)のロのとおり定めて

いるが(注1)、これは、その地域における標準的な宅地の地積に比して

広大な土地の開発行為を行う場合、道路や公園等の公共公益的施設用地

としてかなりの潰れ地が生ずることが考えられるから、財産評価上、

これを考慮する必要があるという趣旨のものと解される。

また、都市計画法第29条及び同法施行令第19条は、開発行為を行うに

当たって開発許可を必要とする面積基準を定めているが、これは秩序ある

街づくりを目的とした整備のため、開発地区内に道路等の公共公益的施設が

必要となる場合の多いことから、基準以上の規模の開発行為を規制の対象

とするという趣旨のものと解される。

そうすると、開発許可を必要とする面積基準以上の土地について、その土地

の価額を評価通達24-4の定めに従って評価することは、当審判所に

おいても、相当と認められる。

(注1はここから)

ロ 財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか。

ただし、平成13年5月10日付課評2-6による改正前のものをいい、

以下「評価通達」という。)24-4(広大地の評価)は、その地域に

おける標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法

第4条(定義)第12項に規定する開発行為(主として建築物の建築又は

特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいい、

以下、これを「開発行為」という。)を行うとした場合に、公共公益的

施設用地の負担が必要と認められる土地(以下「広大地」という。)の

価額は、次により評価する旨定めている。

(イ) 広大地が路線価地域に所在する場合に、その価額を評価通達の

定めに従って計算するにあたっては、評価通達15(奥行価格補正)の

補正率(以下「奥行価格補正率」という。)に代えて、その広大地の地積に

占める公共公益的施設用地以外の地積の割合(以下「有効宅地化率」と

いう。)を適用する。

(ロ) ここでいう「公共公益的施設用地」とは、都市計画法第4条

第14項に規定する道路、公園等の公共施設の用に供される土地及び

都市計画法施行令第27条に定める教育施設、医療施設等の公益的施設の

用に供される土地をいう。

(ハ)その広大地について経済的に最も合理的と認められる開発行為が

マンション等を建築することを目的とするものである場合には、公共公益的

施設用地は生じない。
(注1はここまで)

ハ 一方、評価通達24-4に定める広大地の評価の趣旨が上記ロのとおり

である以上、評価すべき土地の地積が広大であっても、周囲の状況等から

みて明らかにマンション用地として適している土地や道路に面して間口が

広く奥行が短い土地のように、明らかに公共公益的施設用地としての潰れ地

が生じないと認められる土地については、同通達を適用して評価することは、

合理性を欠くものといわざるを得ない。

ニ これを本件についてみると、本件土地は、開発行為を行うとした場合

には開発許可を必要とする土地であり、また、各認定事実によれば、

明らかに潰れ地が生じない土地には該当しないから、本件土地の価額を算定

するについて、評価通達24-4を適用することは、合理的と認められる。

ホ この点に関し、原処分庁は、本件土地は公共公益的施設用地の負担が

ない旗状の宅地による開発が可能であり、また、現に、本件土地の一部

である本件売却土地は、旗状の宅地による開発がされているから、本件土地

を評価するにつき評価通達24-4を適用することはできない旨主張する。

しかしながら、本件土地は、認定事実によれば、公道からの奥行が長い土地

であるから、仮に、本件土地を原処分庁が主張するような旗状の宅地として

開発する場合、公道から離れた画地については、公共公益的施設としての

道路に代えて、公道に通ずるための通路が必要となる。そして、この通路

部分は、通路として用途が限定されることとなり、また、旗状に画地を

分けることにより、本件土地内に不整形な画地を生み出すこととなるから、

このような開発は、公共公益的施設としての道路を設ける開発と同様に、

本件土地の評価額を低下させる要因となることが認められる。

そうすると、このような事情を考慮した場合、本件土地を評価通達24-4

の定めに従って評価することは、必ずしも不合理であるとはいえない。

また、相続税法第22条が、上記1の(3)のイのとおり規定していること

からすれば(注2)、相続財産の価額は、相続開始の時における財産の現況

に応じて評価すべきであるから、原処分庁の主張するように、相続開始後の

財産の状況をもって評価方法の適否を判断することは、相当でない。

したがって、これらの点に関する原処分庁の主張には、理由がない。

(注2はここから)
イ 相続税法第22条(評価の原則)は、相続により取得した財産の価額は、

特別の定めのある場合を除き、当該財産の取得の時における時価による旨

規定している。
(注2はここまで)

ヘ 一方、請求人らは、本件土地の開発行為を行うとした場合、本件土地内

に255.98平方メートルの道路用地を確保する必要があるから、評価

通達24-4に定める有効宅地化率を0.78として本件土地を評価すべき

である旨主張し、その根拠として平成14年7月12日付株式会社■■■■

■■作成の土地利用計画図を原処分庁に提出している。

そこで、当審判所において、本件土地の現地確認を行った上で、この土地

利用計画図等を基に検討したところ、請求人らの主張する開発の方法は

相当と認められたので、請求人ら主張の有効宅地化率を適用して本件土地の

価額を算定すると、その額は、別表3の「請求人ら主張額」欄記載の金額と

同額となる。

〇納付すべき税額等について

以上のとおりであるから、これに基づき、請求人らの相続税の課税価格及び

納付すべき税額を算定すると、その額は別表1の「更正の請求」欄記載の

各金額と同額となるから、原処分は、いずれもその全部を取り消すべきである。

結果として、全部取消しとなり、本件土地の一部である本件売却土地が

旗状の宅地による開発がされているにも関わらず、広大地の評価が

認められたのです。

「相続により取得した財産の価額は、特別の定めのある場合を除き、

当該財産の『取得』の時における時価」ではありますが、その後の売却、

開発の状況により広大地評価の可否に大きな影響を与えることは間違い

ありません。

しかし、売却後の開発の状況に100%縛られる訳ではないことも事実です。

広大地評価については当初申告で採用するのか?更正の請求で採用するのか?

という論点もありますが、イコールではないということは覚えておいて

頂ければと思います。

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