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2018.03.30

生命保険金の受取人は誰にすべきか?(その2)

※2017年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「生命保険金の受取人は誰にすべきか?(その2)」ですが、

東京高裁(平成17年10月27日判決)を取り上げます。

前回の記事で最高裁(平成16年10月29日判決)を取り上げ、

生命保険金は原測として受取人固有の財産ですが、「特段の事情が

存する場合には〜当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて

持戻しの対象となると解するのが相当である」という内容を解説しました。

この「特段の事情」が認められたのが、今回の判決です。

〇抗告人が○○生命保険〔1〕〔2〕により受領した保険金額は

合計1億0129万円(1万円未満切捨)に及び,遺産の総額(相続開始時

評価額1億0134万円)に匹敵する巨額の利益を得ており,

受取人の変更がなされた時期やその当時抗告人が被相続人と同居しておらず,

被相続人夫婦の扶養や療養介護を託するといった明確な意図のもとに

上記変更がなされたと認めることも困難であることからすると,

〜記録から認められる,それぞれが上記生命保険金とは別に

各保険金額1000万円の生命保険契約につき死亡保険金を受取人として

受領したことやそれぞれの生活実態及び被相続人との関係の推移を

総合考慮しても,上記特段の事情が存することが明らかというべきである。

〇○○生命保険〔1〕〔2〕について抗告人が受け取った死亡保険金額の

合計1億0129万円(1万円未満切捨)は抗告人の特別受益に準じて

持戻しの対象となると解される。

〇抗告人は,平成8年5月22日,保険料が全納されていた

○○生命保険〔3〕の契約者,受取人となることにより,被相続人から

契約上の地位の移転を受けたものであり,これが生計の資本としての

贈与にあたるものであり,その相続開始時の解約返戻金額441万円を

もって特別受益額と評価するのが相当である。

〇抗告人は、〜契約上の地位を被相続人の求めに応じ買い取ったと

主張するが,その事実を認めるに足りる証拠はない。

〇抗告人は,上記変更等による利益の付与につき,被相続人から

持ち戻し免除の意思表示がなされたと主張するが,その事実を認めるに

足りる証拠はない。

〇すなわち,抗告人は,平成3年5月には歯科医師国家試験に合格し,

上記付与の当時歯科医師として稼働しており,被相続人において,

抗告人の生活を保障する趣旨で上記利益を付与したとは考えがたく,

また,相手方と抗告人とを対比し,抗告人に被相続人や被相続人夫婦の

扶養や療養介護を託するといった明確な意図のもとに上記利益を

付与したとみることも困難である。

〇〜記録によれば,被相続人は,抗告人とは良好な関係にあったが,

相手方とは暴力を振るわれるといった事態に至るなど関係に

苦慮していたことが認められるが,遺言書を作成したり,

遺産の相続について特別の意思を表明した事実は認められないのであって,

被相続人が上記持ち戻し免除の意思表示をしたと認めることは困難である。

前回に解説した通り、明確な数値基準がある訳ではなく、

あくまでも総合勘案の世界ではあります。

ただし、

〇受け取った生命保険金額が1億0129万円(1万円未満切捨)

〇遺産の総額(相続開始時評価額1億0134万円)

ということから「特段の事情」が認められた事例としては、

1つの数値基準「的」なものではあります。

皆さんがお客様から相談を受けた場合には、

このあたりも含めて、提案をしていくことが大切なのです。

あくまでも総合勘案の世界ではありますが・・・。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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