2016.03.18

理由附記だけで勝てる!

※2014年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

平成23年の改正より、青色申告者に対する更正(処分)
のみならず、納税者にとって不利益となる処分であれば、
すべて「理由の附記」がなされることになりました。

ここであまり知られていないのは、理由附記には「程度」が求められ、
その程度を満たさない処分は不適法として取り消されることになります。

簡略化して書けば、

更正や重加算税の処分通知に理由附記がある
→理由を読んでも、なぜ処分されたのかわからない
→不服申立てをする
→理由附記の程度が満たされていないと処分取消し

言い換えれば、処分の「根拠・内容」ではなく、ただ理由附記の程度
を満たさない、というだけで納税者は勝てるのです。

なぜこのようなことが起こるのか、詳細については下記を
お読みいただきたいのですが、この中から一部を抜粋して
解説を加えたいと思います(国税職員が書いた論文です)。

「課税処分の理由提示における実務上の諸問題」

http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/72/03/01.pdf

①理由附記を求める趣旨は、課税庁の恣意を抑制し、
 不服申立てに便宜を与えること

理由附記が極端に短かく、例えば「法人税法第22条に基づき
更正をした」などとしか書かれていなければ、何を根拠に
処分されたのか、実質的に知ることができませんから、
これでは理由附記の制度が成り立たないことになります。

②処分の性質と理由附記の趣旨に照らして、記載の程度が決まる

だからこそ、理由附記には記載の「程度」が求められ、
一般的な第3者が読んでも、なぜ処分されたのか、
理解できる程度が求められるのです。

③法の要求する記載がない場合、処分は取り消される

理由附記がない処分はもちろん、理由附記の程度を満たさない
処分も、法律要件を満たさないことから取消しになります。

④記載内容のみから理由の内容は判断される

「調査官が処分の理由を、調査時に口頭などで伝えた」
ということは一切関係ありません。あくまでも
理由附記という書面内容だけで程度が判断されます。

もちろん、理由附記の程度を満たさない、とした判決などは
数多く存在しますが、新しい裁決を1つ紹介します。

【公開裁決事例 平成24年4月9日】
「更正通知書に付記した理由に不備があるとした事例」

http://www.kfs.go.jp/service/JP/87/14/index.html

(要旨)

原処分庁は、更正通知書に付記した理由については、
架空の資産(建物附属設備)に係る減価償却費は損金の額に
算入されないという法的評価を行ったものであるから、
更正の理由付記に求められる要件を満たしている旨主張する。
しかしながら、本件更正処分の態様は、請求人の固定資産台帳の
記載を認めず、建物附属設備を架空の資産であると判断した
ものであるから、帳簿の記載自体を認めないで更正処分を
行う場合に該当するところ、当該更正通知書に付記された理由は、
どのような根拠で架空の資産と判断したのかについて資料の摘示がなく、
その判断過程も記載されていないことから、法人税法第130条
《青色申告書等に係る更正》第2項に規定する要件を
満たさない違法なものである。

処分というのは、(増額)更正だけではありません。
重加算税も理由の附記が必要で、「仮装・隠ぺい」とだけ
書かれていれば、それは程度を満たしていないことになります。

「なぜ、仮装・隠ぺいに該当するのか」まで書かれていなければ
取消すことができるかもしれませんので、税務署からの通知
があれば、理由附記を絶対に確認してください。

 

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