2015.11.19

無申告事案と重加算税

皆さん、こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「無申告事案と重加算税」です。

今、7年間の無申告事案に関する対応をしているのですが、

その中で重加算税との指摘を受けています。

ただし、このブログでも繰り返しお伝えしてきた通り、過少申告であれ、

無申告であれ、重加算税の賦課要件は「隠ぺい、仮装」であり、

その立証責任は課税庁側にあると解されています。

ちなみに、最高裁(平成7年4月28日)では下記と判示しています。

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重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、

仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、

隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされた

ことを要するものである。しかし、右の重加算税制度の趣旨にかんがみれば、

架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要

であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告する

ことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、

その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の右賦課要件が

満たされるものと解すべきである。
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当然、無申告だから、税額が多額だから、という理由で重加算税には

なり得ないのです。

しかし、無申告事案につき、重加算税が認められた下記裁決もありますが、

この事案では帳簿書類の破棄や隠匿がない状況にも関わらず、下記などを

根拠として、重加算税の賦課決定を相当と認めました。

○確定申告の手引の「時効は7年」という部分に丸印が付されており、

請求人には法定申告期限から7年すれば、納税を免れられるという認識が

あった

○請求人は記帳代行会社から税理士に申告業務を依頼するか?という旨の

連絡を受けたが、断っている

○請求人の損益計算書等が記帳代行会社から送付されており、請求人は

確定申告が可能な状態であった

○請求人は損益計算書等のにより税額を認識していたこと、

(平成23年6月3日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/83/02/index.html

いかがでしょうか?

無申告事案の場合、重加算税の賦課要件を充足するか否かという論点は

延滞税の計算にも影響してくるだけに、非常に重要なものとなります。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/chosyu/760610/01.htm

ただし、重加算税を課すためには、隠ぺいまたは仮装という行為が必要で、

その立証責任は課税庁側にあることは事実です。

しかし、その立証がないままに、重加算税との指摘を受けることは

よくあるかと思うので、ご注意頂ければと思います。

なお、税大論叢「無申告事案における重加算税の賦課要件」にも

「無申告(による)重加算税が行為の態様に着目するものである以上、

「隠ぺい又は仮装」と評価される行為がなければ賦課要件は充足せず、

挙証すべき証拠の乏しい無申告事案においては、過少申告の場合と対比する

とその賦課が限定的にならざるを得ない面がある。」と記載されています。

(2)イ「隠ぺい又は仮装」行為の限定性、という部分だけでもお読みに

なるといいかと思います。

http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/64/03/

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