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2015.09.07

法人の売上計上漏れは重加算税じゃない!

先月から全国的に「税務調査対策研究会」が開始され、
今まで私の話を聞いたことがない税理士の皆さんに
税務調査の実態をお伝えする機会が急激に増えました。

私の話の中でもっとも驚かれるのが「重加算税」です。

本メルマガでは繰り返し重加算税のことを書いていますが、
いまだに重加算税を理解されていない方が多いのは非常に残念です。

税務調査対策メルマガVol.186「法人と個人で重加算税の基準が違う?」
でも書きましたが、法人に対する調査では
売上の漏れは重加算税だと指摘されることがほとんどです。

このように指摘する税務署の論理はこうです。
(もちろんここまで考えている調査官ばかりではないのですが)

「法人は複式簿記であることを前提にしている。
複式簿記であれば、売上を計上漏れすれば、
現金なり売掛金などの反対科目で不足額が発生し、
結果として計上漏れしていることが決算時にわかるはずだ」

税理士からすると、このような理論はあくまでも「建前」であって、
現実は違うという「本音」を主張したくなるはずです。

売上の計上漏れがあり、結果的に現金過不足が発生していたとすれば、
実務上は現金過不足分を営業外損益で調整するでしょうし、
決算時に売掛金を拾い漏れていれば、
売上計上漏れに気付かないのは当然のことでしょう。

こう考えれば、(故意に)売上除外したのであればともかく、
売上を計上漏れしたという事実は、単なるミスであって、
重加算税の対象にはなり得ないわけです。

このような公開裁決事例があります。

「所得を過少に申告するという確定的な意図について、
請求人には外部からもうかがい得る特段の行動があったとは
認められないから、隠ぺい又は仮装があるとはいえず
重加算税を賦課することは相当でないとした事例」
(平成23年2月23日裁決)

http://www.kfs.go.jp/service/JP/82/03/index.html

この裁決の中で、不服審判所はこう判断しています。

「請求人が取引内容の具体的説明をD税理士自身にしなかったからといって、
それが故意の隠ぺい又は仮装の行為であるとか、過少申告の確定的意図を
外部からうかがい得る特段の行動であるなどということはできない。」

「帳簿書類等について十分な検討をし、かつ、意思疎通を十分に図るなど
して原因を解明して適正な経理処理をすべきであり、請求人の経理処理が
適正さを欠いた処理であったことについて非難を加えられるべきことで
あったとしても、請求人が積極的な意思をもってあえて適正な経理処理を
行うことなくこれを放置したとまで認めるには至らず、
かかる仮受金勘定の誤った経理処理をもって、故意の隠ぺい又は
仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る
特段の行動があったとまでいうことはできない。」

ここからわかる通り、重加算税の賦課要件はあくまでも
「仮装・隠ぺい」であり、これらの行為は「故意の隠ぺい又は
仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る
特段の行動があった」かどうかで判別されるのです。

ミスというのは絶対に発生するものです。
ミスがないというのであれば税務調査は必要ありません。

またミスに重加算税が課されるのであれば、
すべての修正申告=重加算税になるわけで、あり得ない話なのです。

またここで重要なのは、金曜日のメルマガを担当している
見田村税理士も6月28日配信の「事業用資産の買換えと重加算税」
の中で書いていますが、重加算税の立証責任は
税務署(調査官)側にあるのです。

「売上の計上漏れ=重加算税」と指摘されたら、
まず漏れ=ミスであることを主張し、
「故意の隠ぺい又は仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部から
うかがい得る特段の行動があった」ことを調査官に
立証させる必要があるというわけです。

なお公開裁決事例の中に、重加算税で納税者が勝った
事案がまとめられていますので、ぜひ参考にしてください。

http://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0605030200.html

 

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一切受け付けておりません。

なお、2013年7月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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