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2015.06.03

法人と個人で重加算税の基準が違う?

今回は「 法人と個人で重加算税の基準が違う?」です。

ある税理士さんからの質問です。

「法人であれば、売上の「漏れ」でも重加算税だと
指摘されるのですが、相手が個人だと同じ
売上の漏れでも重加算税とは言われません。
これっておかしいことではないですか?」

はい、確実におかしいです。
なぜなら、重加算税は「国税通則法」第68条に
規定されているので、各税目ごとに重加算税の
賦課基準が違う、ということは理論上あり得ません。
法人・個人どころか、相続・消費税までも
重加算税の賦課基準は同じになるはずです。

では、質問のようになぜ法人の売上計上漏れだけ
重加算税と指摘されるのかといえば、
それは税務署内の慣習でしかありません。

法人課税の調査官は、「売上に漏れ」があれば
重加算税だと教えられており、個人課税の調査官は、
「不正」があれば重加算税だと言われています。

ちなみに、売上の「漏れ」は重加算税ではありません。
「漏れ=ミス」であり、ミスに重加算税が課されないのは、
「その売上計上もれは重加算税か?」で解説したとおりです。

あくまでも重加算税の賦課基準は
「隠ぺいまたは仮装」行為があった場合なのですが、
具体的にどのような行為を「隠ぺいまたは仮装」とするのか、
実際のところは税目ごとに違ってきます。

「隠ぺいまたは仮装」を具体的に示しているのは、
通達ではなく事務運営指針です。

重加算税の事務運営指針ですが、
復興特別税の新設により、若干規定が変わりましたので、
見たことがあるという方でも、所得税については
再度チェックしておくことをオススメします。

一覧で示しておくと、下記のとおりです。

【法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)】
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/000703-2/01.htm

【申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)】
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-2/01.htm

【相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)】
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sozoku/000703-2/01.htm

【消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱い について(事務運営指針)】
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/shozei/010329-2/01.htm

ここで注意が必要なのは、上記事務運営指針も
税目ごとに規定の内容が違うということです。

例えば、所得税で「隠ぺい又は仮装に該当する場合」として

(3) 事業の経営、売買、賃貸借、消費貸借、資産の譲渡又はその他の取引 (以下「事業の経営又は取引等」という。)について、本人以外の名義 又は架空名義で行っていること。ただし、次の又はの場合を除くものとする。
①配偶者、その他同居親族の名義により事業の経営又は取引等を行っているが、
  当該名義人が実際の住所地等において申告等をしているなど、
  税のほ脱を目的としていないことが明らかな場合
②本人以外の名義(配偶者、その他同居親族の名義を除く。)で事業の経営 又は取引等を行っていることについて正当な事由がある場合

(4) 所得の源泉となる資産(株式、不動産等)を本人以外の名義又は
  架空名義により所有していること。ただし、(3)の又はの場合を除くものとする。

(5) 秘匿した売上代金等をもって本人以外の名義又は
  架空名義の預貯金その他の資産を取得していること。

(6) 居住用財産の買換えその他各種の課税の特例の適用を受けるため、 所得控除若しくは税額控除を過大にするため、又は変動・臨時所得の 調整課税の利益を受けるため、虚偽の証明書その他の書類を自ら作成し、 又は他人をして作成させていること。

(7) 源泉徴収票、支払調書等(以下「源泉徴収票等」という。)の記載事項を 改ざんし、 若しくは架空の源泉徴収票等を作成し、又は他人をして 源泉徴収票等に虚偽の記載をさせ、若しくは源泉徴収票等を提出させていないこと。

(8) 調査等の際の具体的事実についての質問に対し、虚偽の答弁等を行い、 又は相手先をして虚偽の答弁等を行わせていること及びその他の事実関係を 総合的に判断して、申告時における隠ぺい又は仮装が合理的に推認できること。

と規定されていますが、これらの項目は所得税に
固有の規定で、法人税にはありません。

消費税も同じように「重加算税を課す消費税固有の不正事実」
があり、まさに消費税固有の規定です。

所得税等の所得金額には影響しないが、消費税額に影響する不正事実(消費税固有の不正事実)により、消費税が過少申告となった場合については、消費税の重加算税を課するのであるが、この場合には、
例えば、次のような不正事実が該当する。
イ 課税売上げを免税売上げに仮装する。
ロ 架空の免税売上げを計上し、同額の架空の課税仕入れを計上する。
ハ 不課税又は非課税仕入れを課税仕入れに仮装する。
ニ 非課税売上げを不課税売上げに仮装し、課税売上割合を引き上げる。
ホ 簡易課税制度の適用を受けている事業者が、資産の譲渡等の相手方、 内容等を仮装し、高いみなし仕入率を適用する。

11月も半ばに差し掛かると、税務調査も
そろそろ終盤戦という事案も多いことでしょう。

重加算税と指摘され、判断に迷った場合は
事務運営指針を熟読することが大事です。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2012年11月当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

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