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2016.01.14

期末の前倒経費計上は重加算税か?

春の税務調査が始まり、重加算税と指摘される
事案の相談が急激に増えました。

どんな税目でも重加算税は問題になります。
公開裁決事例をもとに、重加算税を解説しましょう。

「課税仕入れに係る支払対価の額に翌課税期間に
納品されたパンフレット等の制作費を含めたことについて、
隠ぺい仮装の行為はないとした事例」

http://www.kfs.go.jp/service/JP/92/05/index.html

本裁決は、消費税に重加算税を賦課されたものですが、
前提・論点としては、

・法人が期末にパンフレットを発注した

・納品が翌期(翌月)になってしまった

・請求書は期内の日付にしてくれるよう
 パンフレット作成会社に依頼した
 (予算上支払いを期内に行いたいから)

・支払いは請求書をもってのみ行われ、
 納品の事実などは確認していなかった
 (期内に支払いが行われている)

・法人税は債務確定なので損金で問題なし

・消費税の課税仕入れに算入して申告したが
 納品の事実がないとして否認
 (納得して修正申告をしています)

・取引先と通謀したとして消費税に重加算税
 (通謀と意図的な集計違算が根拠)

納税者(法人)は、下記のポイントで反論しました。

・意図的ではない

・社内ルール・情報共有を含めた単なるミス

として、「隠ぺい・仮装行為はない」と主張、
重加算税に関して真っ向から反論しており勝っています。

正直言いますが、なぜ重加算税を課されたんだ!?
という事案に間違いないでしょう。
(これは修正申告で結了している事案で、
本税は更正されていません)

何か強引に税金を減らそうとしたわけでもなく、
消費税のみの事案です。

しかも、よくある期末の発注で、期内に
納品されたかされていないかの判定だけです。

ここからは憶測でしかありませんが、
税務調査での説明・主張が悪かったのでしょう。

また、重加算税の話をせずに、修正申告書を
提出して、後日重加算税の通知が届き、
驚いて不服申立てしたものと考えます。

では、税務調査でどのような説明・主張を
すればよかったのでしょうか。

本裁決の判断にある通り、ポイントは、
「経理事務に関する慣行として」いるかどうかです。

納品書を添付しないこと、また納品事実を確認しないことは、
「経費計上に対する社内的なチェック体制に不備」
であり、「経費の計上時期について、金額の多寡にかかわらず、
厳格性を欠いていたものと認められる」が、
だからといってそれが「隠ぺい・仮装」ではない、
つまり、ただのミス・不備だということです。

本裁決のような内容は、どこの法人にでも起こります。
普通の会社は、期をまたいで納品されたかどうかに
よって、税金が変わるなど知りません。

ここで、説明・主張すべきは

「社内のルールとして、どうなっているのか?」
「なぜそのような計上が行われたのか?」
「意図的であったのか?」
「日頃の経理処理がどうなのか?」

という論点なのです。つまり、何か特別なことをして
意図的にしていないということの説明・主張です。

間違っている以上、納税者に非はあります。
しかし、「隠ぺい・仮装」行為がなければ
重加算税は課されないのです。

「何となく重加算税かな」で判断せず、
「隠ぺい・仮装」ではないという積極的な
説明・主張が税務調査では求められるのです。

また本事案のように、修正申告した後に、
(何も聞いていないで)重加算税が課される
ケースがあります。調査の結了時には
加算税の確認も必要なのです。ぜひご注意を。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

※2014年4月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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