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2015.03.09

更正するなら青色の取消?

今回のテーマは、『更正するなら青色の取消?』です。

税務調査の最盛期を迎え、かなり悩みの深い相談が弊社に入っています。その多くは、交渉で終わるものですが、中には文書(抗弁書)まで
書いて提出しなければ収まらないものもあります。

私もセミナーなどでは「税務調査は交渉です!」と話させていただいて
おりますが、その交渉の最終点は、「納得できないので修正申告しません。(増額)更正してください。」と調査官に言うことです。

さて、ここで問題になるのは、調査官が
「更正するなら、青色申告の取消をしますよ。」
と反論してくるケースです。

青色申告の取消の要件を知らなければここでひるんでしまい、
「じゃあ修正申告を提出するしかないな」と交渉で負けるわけです。

そもそも調査官が、「更正するなら青色申告を取消す」と
主張する理由とは何でしょうか?

課税庁が(増額)更正する場合、「青色申告者には」更正通知書に
理由の付記が必要とされています。
(法人税法130条第2項、所得税法155条第2項)

更正するということは、不服申立ての手続きから
裁判までにいく可能性があるということであり、
更正通知書に記載すべき理由には、詳細な記載が求められます。

税務調査の現場では、否認根拠が不明確なものが多く
法令の解釈論や、社会通念から考えざるをえない事項、
また「総合的に勘案」するような曖昧さがあるものです。

調査官もその辺はよくわかっていて、
更正をするにしても、更正通知書に記載する理由が不明確で
実際には書けない状況なので、理由の付記を不要とするために
青色申告を取消してから更正をしようとするわけです。

青色申告を取消されることで、将来的にデメリットを被ることは当然ながら、調査対象年分の増差所得・税額が一気に増える可能性があります。典型的なケースが、調査対象年分に繰越欠損金がある場合です。

青色申告の取消は、なんと遡及効(過去に遡って効力を有する)があるのです。

法人税法第127条(青色申告の承認の取消し)
第121条第1項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、
当該各号に定める事業年度までさかのぼつて、その承認を取り消すことができる。

青色申告の取消しをされると、過去に遡って
(通常調査対象年分の最大である7年遡及になります)
青色申告ではなかったものとみなされ、青色申告の特典は適用されません。
つまり、繰越欠損金の相殺処理自体が否定されるわけです。

では、青色申告が取消される要件は何でしょうか?
再度法人税法第127条を見ると、下記5つの要件が明記されています。

1.その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第1項に規定する
 財務省令で定めるところに従つて行われていないこと 当該事業年度
2.その事業年度に係る帳簿書類について前条第2項の規定による
 税務署長の指示に従わなかつたこと 当該事業年度
3.その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし
又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の
全体について その真実性を疑うに足りる相当の理由があること 当該事業年度
4.第74条第1項(確定申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかつたこと
 当該申告書に係る事業年度
5.第4条の5第1項(連結納税の承認の取消し)の規定により第4条の2(連結納税義務者)
 の承認が取り消されたこと その取り消された日の前日の属する事業年度

さて、税理士が顧問についていて上記のようなケースがあり得るでしょうか?

さらに・・・本ブログの『青色を取消す!と言われたら?』でも紹介しましたが、
青色申告を取消すための要件を詳細に明記した事務運営指針があります。

「法人の青色申告の承認の取消しについて」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm

ここでは、青色申告を取消すケースを6つのパターンに分けて
「詳細に」明記しています。

本ブログでは何度も書いていますが、事務運営指針は
調査官が遵守すべき内規(内部規則)です。

文面の都合上、この事務運営方針を逐一解説しませんが・・・

調査官が「青色申告を取消しますよ」と言ってきた場合、
本当にこれらに該当するのか確認する必要があります。

また税理士であれば、税務調査で交渉に立ち向かうためには
事前にこの事務運営指針を把握しておく必要があるのです。

 

※2011年10月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。

また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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