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2017.03.09

更正があるべきことの予知と修正申告

※2016年9月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

今回は「更正があるべきことの予知と修正申告」ですが、

平成22年6月22日の裁決を取り上げます。

現在の国税通則法65条5項には過少申告加算税につき、

下記と定められています。

〇修正申告書の提出がされた。

〇税務調査により、更正があるべきことを予知してされた修正申告でない。

〇過少申告加算税の対象にはならない。

→結果として、重加算税の対象にもならない。

だから、税務調査前であれ、税務調査の途中であれ、

具体的に指摘される前に修正申告をした場合、

更正があるべきことを予知してされた修正申告でなければ、

過少申告加算税も重加算税もかからないのです。

この「更正があるべきことの予知」という立証が課税庁側で難しく、

この部分は税制改正がされ、平成29年1月1日以後に法定申告期限が

到来する国税については下記制度となります。

https://www.tabisland.ne.jp/explain/zeisei_h28/zesh28_6_2.htm

ただし、これは来年以降の話なので、今年に行われる税務調査に関しては、

現在の法令で運用されます。

では、下記状況だったら、どうなるのでしょうか?

〇調査開始前に顧問先は顧問税理士に経理担当者の横領発覚に伴う

 修正申告書の作成を依頼した。

〇調査初日、税理士は税務調査官に対し、事実関係を説明した。

〇その後、修正申告書を提出した。

これに関して、原処分庁は過少申告加算税と重加算税を課したのでした。

しかし、国税不服審判所は下記と判断したのでした。

〇申出を受けた調査担当職員は、当該申出に係る部分を除いて調査を

 行ったものであり、調査担当職員の調査により更正がなされることを

 予知されたと評価すべき事実を認めることはできない。

〇以上によれば、~修正申告書は本件調査があったこととは別に

 自主的に提出されたものであり、調査があったことに基づいて

 提出されたと認められないことから、更正があるべきことを予知して

 された修正申告書の提出には当たらない。

〇原処分庁は、本件調査の初日の平成20年10月1日に、関与税理士から

 本件横領の事実及びこれに係る経理処理等を確認している途中であり、

 引き続き解明したい旨の申出がなされた事実は認められるが、~修正

 申告書は平成21年1月16日に提出されており、この申出をもって、

 請求人が修正申告書の提出を予定し、これに先立って、原処分庁に対して

 真に自発的な修正申告の確定的な決意の表明があったものとは認められない

 旨主張する。

〇しかしながら、本件調査前に調査担当職員において本件横領に係る事実は

 把握されておらず、また、平成20年10月1日の申出の際に交付された

 本件合計表の写しに記載された本件横領の合計額と、修正申告書に係る

 本件各事業年度の修正額の合計額とはほぼ一致しており、請求人が把握した

 本件横領のすべてについて修正申告をする旨の申出がなされたとみることが

 できるのであるから、仮に、調査担当職員が本件調査において本件横領に

 係る事項等をも念頭に置いた上で、請求人の帳簿類等の確認を行っていた

 としても、それにより、当該修正申告書の提出を「調査があったことにより

 更正が予知されたものでないとき」とみることを妨げるものではなく、

 原処分庁の主張には理由がない。

税務調査前であれ、税務調査の途中であれ、「更正があるべきことを予知」

していない状態で提出された修正申告書は過少申告加算税等の対象に

なりません。

この「更正があるべきことの予知」の立証が難しいので、

税制改正に至った経緯もあります。

もちろん、多額の所得を当初申告において意図的に申告せず、

事前通知後に修正申告をするという行為までが本来は救われるべきものでは

ありません。

しかし、正当的な行為としての修正申告は当然に過少申告加算税等の

対象から外れるべきものです。

顧問先から本裁決と同様の依頼があった場合、税務調査前に修正申告書を

出してしまえばいいのですが、仮に本裁決と同様の状況になったとしても

「更正があるべきことの予知」という状況が変わる訳ではありません。

ここは正確に覚えておいてください。

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