2017.01.05

時価とは何か?

※2016年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

通常、税務調査において取引価格の適正性について
問題になるのは、同族間売買が行われているような
ケースかと思いますが・・・本日のメルマガでは、
第三者間取引で時価が問題になった実例を取り上げます。

さて、法人に対して税務調査が入り、外注費を
確認されたところ、調査官が「この外注費は高い」
として否認指摘されました(この外注先は
関係会社などではなく、まったくの第三者)。

確かにその外注費に該当する役務提供を、ネット等で
調べてみると、もっと安く依頼することができます。

このようなケースにおける「時価=適正な価格」とは、
結局何を指すのでしょうか?

調査官がよく勘違いしているケースとして、
「時価=最安値」というものがあります。

法人は合理的な選択をするはずだから、
他社に依頼する場合は最安値であろうはず、という考えです。

はい、もちろん時価と最安値は違います。
では、なぜ違うでしょうか?
不動産の売却で考えてみましょう。

不動産を売却する場合、売却先の候補として
大きく2つに分けることができます。

個人:居住用等の目的で購入。多数の個人が
購入を検討するため、売却価格は高くなるが、
その分すぐに売却できるわけではない

不動産会社:転売目的(仕入)で購入。すぐに
売却できるが、売却価格は安くなることが多い

つまり、同じ不動産を第三者に売却するケースであっても、
売り出し方・売り出す相手方によって、売却時期や
売却価格は変わるのです。早く売って現金化したいなら、
安くても、不動産会社に対して売り出すべきなのです。

調査官によっては「一物一価」と思い込んでいる人が
いますが、それは明らかな間違いです。

物やサービスが同じであっても、その価格に
差があるのは当然であり、最安値に依頼しないと
税務上問題にあるわけではありません。

・物やサービスの質が高い
・納期が早い(対応が早い)
・便利
・いつも頼んでいて安心

などの理由により、安くなくても仕事を依頼することは
普通にあって、それにも合理性があるわけです。

法人だけの問題ではありません。
資産税でも第三者間取引の時価が問題になります。

つい先日、私に相談があった調査事案として下記がありました。

・不動産の売却を入札により行った

・売却価格は路線価の約2倍

・取得価額が不明のため市街地価格指数を用いて算出

・調査官は「売却価格が高く、時価とは言えないため
取得価格の算出方法として市街地価格指数が使えないと指摘

もちろん、売却先は第三者にもかかわらず、
時価が問題となるケースがある、ということです。

しかも、低額譲渡ではなく、高く売却できたのに
否認指摘されるとは・・・

時価については詳細に知りたい方は、

「租税法上の時価を巡る諸問題」
https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/36/asai/ronsou.pdf

をお読みください。

調査官は、否認のための根拠しか考えていないわけで、
第三者間取引であっても、その適正性について
疑義をふっかけてきます。

時価とは何なのか?
これを機に知っていただければと思います。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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