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2017.03.30

役員報酬の増額と過大額の判定基準

※2016年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「役員報酬の増額と過大額の判定基準」ですが、

名古屋地裁判決(平成6年6月15日)を取り上げます。

役員報酬の過大額(実質基準)は法人税法施行令第70条において、

〇当該役員の職務の内容

〇その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況

〇その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの

 役員に対する給与の支給の状況

などを参照し、判断することになっています。

ここは総合勘案という要素が強いですが、数値的な基準が示されたのが、

今回の事例です。

この会社の売上、所得は下記の状況となっていました。

○昭和61年2月期

・売上:130,017千円

・所得金額:437千円

○昭和62年2月期(係争事業年度)

・売上:186,338千円

・所得金額:1,385千円

この状況の中、社長A(夫)の役員報酬(年)を360万円から

1,800万円に増額しました。

この金額は類似法人の平均額の2.93倍、最高額の2.14倍です。

そして、常勤取締役B(妻)の役員報酬(年)を300万円から

960万円に増額しました。

この金額は類似法人の平均の2.56倍、最高額の1.26倍です。

ちなみに、使用人給料は前年比1.16倍、賞与は前年比1.64倍

という状況でした。

この状況の下、名古屋地裁は下記と判示したのでした。

〇AとBは、株式会社の取締役であるから、一般の従業員とは異なり、

その超過勤務時間に応じて給与を支給すべきものではないが、その報酬の

決定に当たつては、勤務時間も十分考慮すべきところ、その評価は、

右の態様の職務内容からして、原告の売上金額の増加(約1.43倍)を

基本とし、これに売上総利益の増加(約2.25倍)を加味して行うのが

最も合理的と考えられる。

〇ただし、ラックコートは、いわゆるヒツト商品として飛ぶように売れた

のであるから、当然に利益率は高くなる。したがつて、役務の対価としての

報酬の相当額を判断するに際しては、利益率の増加を特に重視することは

できない。

〇特に商品のヒツトに基づく利益の増加のような一時的な利益の増加は、

本来、役務の対価としての報酬ではなく、利益配分としての賞与の支給額の

決定に際して考慮されるべき性質のものである。

〇そうすると、右の事情からして、AとBの報酬については、前年度の

1.5倍までの範囲で増額(Aについては540万円、Bについては

450万円)がされた場合には、相当な報酬の範囲内にあるものといえる。

〇さらに、類似法人の役員の報酬額を併せ検討するに、原告の売上金額は、

類似法人の売上金額の平均額とほぼ一致しており、本件においては、

原告の役員の報酬が類似法人の役員の平均報酬額(被告西尾税務署長は、

代表取締役については、620万円、その他の取締役については380万円

としている。)を下回るのが相当であるとすべき特段の事情を認めることは

できない。

〇総合考慮すると、Aについては、平均報酬額に基づく620万円が

相当額の上限、Bについては、前年の報酬額を1.5倍した450万円が

相当額の上限と認めるのが相当である。

いかがでしょうか?

名古屋地裁(平成8年3月27日)、裁決(平成9年9月29日)でも

同様に売上などの伸び率などでの比較がされています。

黒字企業の割合も増えた状況ですので、前年よりも利益が上がることが

分かっている会社もあるでしょう。

この場合、役員報酬の増額を検討することもあるでしょうが、

その増額する金額、割合には細心の注意を払う必要があるのです。

 

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