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2016.11.10

建物と建物附属設備の按分計算

※2016年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「建物と建物附属設備の按分計算」ですが、

平成12年月28日の裁決をご紹介します。

今日の内容は以前の全国セミナーで取り上げた裁決事例ですが、

当社で主催している「税務相互相談会」でも何度かご質問が出た際に

参考事例としたものです。

この裁決は「会社員である請求人が不動産貸付の業務に供したマンションの

減価償却費の計算に関して、土地及び建物(建物本体及び建物附属設備を

合わせたものをいう。以下同じ。)並びに建物本体及び建物附属設備の

取得価額の区分を争点とする事案」です。

そして、請求人は「建物:建物附属設備=70:30」と按分し、

減価償却費を計算したところ、原処分庁から「区分が明確でないので、

100%建物として減価償却する」として更正されたのです。

まずは、基礎事実です。

〇請求人は、〔1〕Eマンション306号室、〔2〕Fマンション703号室、

〔3〕Gマンション805号室の各マンションを賃貸目的に取得し、

当該取得した日から不動産貸付の業務の用に供している。

〇本件物件の所在地、新築年月日、取得年月日、取得価額は下記の通り。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/60/17/01.html

この前提の下、国税不服審判所は下記と判断しました。

(イ)所得税法施行規則第32条において、減価償却資産で耐用年数省令に

規定する耐用年数を適用するものについての不動産所得の金額の計算上

必要経費に算入される償却費の額は、当該耐用年数に応じ、耐用年数省令に

規定する減価償却資産の種類の区分ごとに、かつ、当該耐用年数及び

居住者が採用している償却の方法により計算した金額とする旨規定されている。

また、耐用年数省令別表第1の減価償却資産の種類には、建物及び建物附属

設備が区分して掲げられている。
 

なお、耐用年数通達2―2―1により、木造の建物等の建物附属設備

については、建物本体と一括して耐用年数を適用することができること

として取り扱われているが、この取扱いは、木造の建物等にあっては、

建物本体及び建物附属設備の耐用年数の差がそれほど著しくなく、

その建物附属設備の金額も少額な場合が多いことなどから、経理の簡素化等

の見地からの取扱いと解される。
 

したがって、鉄筋鉄骨造りのマンションの場合には、建物本体及び建物附属

設備の減価償却費の計算は、それぞれ別個の耐用年数により計算する必要が

ある。

(ロ)購入した建物本体及び建物附属設備については、それぞれの購入代価等

が売買契約書等で区分して明らかにされている場合は、その区分されている

ところの購入代価等によることとなるが、その購入代価等が区分して明らかに

されていない場合には、建物の取得価額を合理的な方法により建物本体及び

建物附属設備に区分計算する必要がある。

このことから、請求人から提示があった売買契約書等からでは建物本体及び

建物附属設備の価額が明確に区分できなかったので、やむを得ず、建物附属

設備の価額を建物本体の価額に含めたところで減価償却費を計算したとする

原処分庁の主張は採用できない。

(ハ)本件物件については、売買契約書に建物本体及び建物附属設備の

それぞれの購入代価等が明らかにされていない。

そこで、合理的な方法で建物の取得価額を建物本体及び建物附属設備に

区分する必要があるが、請求人が主張する同業他社の物件から見積もった

建物本体及び建物附属設備の価額の割合による方法も合理性のある方法と

認められる。
 

しかしながら、本件物件は、本件物件の建築主が保存する工事請負契約書

から建物本体及び建物附属設備のそれぞれの工事費の割合が算出でき、

これを不相当とする理由は認められないから、請求人が主張する他の物件等

の資料に基づき計算する方法より、本件物件の建築工事に係る資料に基づき

計算される工事費の割合による方法がより合理的と認められる。

なお、この工事費の割合は、新築時におけるものであるから、中古資産

であるFマンション703号室及びGマンション805号室については、新築時から

請求人の取得時までの損耗等を見込んでその割合を補正し、合理性を確保

する必要がある。

いかがでしょうか?

土地建物を購入した場合、その対価が一括して書かれているケースは多く、

この場合、総額を土地と建物にのみ按分しているケースも多いです。

しかし、土地、建物、建物附属設備に按分しなければ、それは「違法」な

所得計算を行っていることになります。

本裁決のポイントは下記の3点です。

〇鉄筋鉄骨造りのマンションの場合には、建物本体及び建物附属設備の

減価償却費の計算は、それぞれ別個の耐用年数により計算する必要がある。

〇購入した建物本体及び建物附属設備については、それぞれの購入代価等が

売買契約書等で区分して明らかにされている場合は、その区分されている

ところの購入代価等によることとなる。

〇その購入代価等が区分して明らかにされていない場合には、建物の取得

価額を合理的な方法により建物本体及び建物附属設備に区分計算する必要が

ある。

非常によく使う考え方ですので、よく覚えておいてください。

 

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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