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2018.06.18

建物、建物附属設備の耐用年数の考え方の違い

※2017年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「建物、建物附属設備の耐用年数の考え方の違い」ですが、

文書回答事例(大阪国税局審理課長、平成17年2月3日)を

取り上げます。

まずは、タックスアンサーNo.5406をご覧ください。

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他人の建物に対する造作の耐用年数

法人が建物を賃借し、その建物に造作を行った場合には、

自己が所有している建物に対して行った資本的支出とは異なり、

その内部造作を一つの資産として耐用年数を見積もった年数により

償却します。

この場合の耐用年数は、その造作をした建物の耐用年数、その造作の種類、

用途、使用材質等を勘案して合理的に見積もることとされています。

ただし、その建物について賃借期間の定めがあり、

その賃借期間の更新ができないもので、かつ、有益費の請求

又は買取請求をすることができないものについては、

その賃借期間を耐用年数として償却することができます。

なお、同一の建物についてされた造作は、そのすべてをまとめて

一つの資産として償却をしますから、その耐用年数は、造作の種類別に

見積もるのではなく、その造作全部を一つの資産として総合して

見積もることになります。

(注)法人が賃借した建物の建物附属設備について造作を行った場合には、

その造作については、その建物附属設備の耐用年数により償却します。

(耐通1−1−3)
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参考:耐用年数の適用等に関する取扱通達

(他人の建物に対する造作の耐用年数)

1−1−3 法人が建物を貸借し自己の用に供するため造作した場合

(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)の

造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、

当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、

合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、

建物附属設備の耐用年数により償却する。

ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の

更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求を

することができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として

償却することができる。

(注) 同一の建物(一の区画ごとに用途を異にしている場合には、

同一の用途に属する部分)についてした造作は、その全てを一の資産として

償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して

見積ることに留意する。
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一般的な賃貸借契約においては、テナント側が造作に関する有益費の請求

または買取請求はできないので、

〇 賃借期間の定めがあること

〇 賃借期間の更新ができないこと

の2点で考えればいいことになります。

結果、この要件を満たす「定期借家契約」による賃借をした場合、

造作に関する耐用年数は賃借期間を採用することができます。

では、定期借「地」契約を前提とした場合、

当該建物の耐用年数はどうなるのでしょうか?

これに関する回答が冒頭の文書回答です。

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照会内容

事業用借地権を設定した土地の上に建設する建物の耐用年数について

当社アサキインターナショナル株式会社は、■■市■■区■■町の

■■■跡地 の有効利用について■■市及び関係団体と協議を

行ってきたところ、当社及び■ ■■■株式会社の関連会社と合弁で

結婚式場等の宴会施設にかかる事業を行うことを決定した。

そこで当該土地の所有者である■■市との間で宴会施設等の事業用建物を

保有する目的で、借地契約を行い公正証書とした。契約に当たり当該土地が

市有地であることから■■市側の提示した契約条件により、賃借期間を

15年間として期間満了時に建物等全てを撤去し現状復帰させて

返還することとし、有益費の請求または買取請求することができないもの

とした。(■■市■■■■■■ 第33条3項により事業用借地権による

土地の貸付期間は20年を超えることはでき ない。)

当該建物は、平成17年3月に完成予定であるが、これら建物及び

附帯設備について15年後の契約期間満了時に撤去することが明らかなので、

耐用年数を当該建物等を事業の用に供した日から契約期間満了時までの

期間としたい。

なお、本契約は、改正借地借家法第24条に規定する事業用借地権である。

(事業用借地権とは、契約期間は10年以上20年未満、

契約を公正証書とする。法定更新、建物再築に伴う存続期間の延長、

建物買取請求権の規定を適用しない。 借地人は、契約満了時に

建物を収去して更地にして返還しなければならない。)

建物の耐用年数については、税法上、法定耐用年数によるものと

定められ例外として耐用年数短縮の申請事由に該当する場合には

承認を受けることで変更することができる。

しかし、本件の契約期間満了時に取り壊す事に関して税法に規定する

申請事由に本件事例に関する事由の記載がないため、これらの制度の

適用を受けることはできない。

しかしながら、減価償却資産における償却期間の意義は、

その使用可能期間において費用化することにあり、個々にその期間を

見積もり制度化している。

よって 本件のごとき建物の存する期間が明らかな場合においては、

その存続期間を償却期間とすることは、会計上合理的であり

税法上も減価償却制度の趣旨に反していないと考える。

そこで建物以外で本件に類似した事例を検討したところ、

「耐用年数の適用等に 関する取扱通達」において建物を賃貸し

内部造作を行った場合で契約の更新ができない定めがあり、

かつ有益費の請求または買取請求することができないものについては、

当該賃貸期間を耐用年数として償却することができるとした規定がある。

(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3ただし書以下)

この規定の趣旨を考えるに、当初契約で使用期間が確定している資産

については、その使用期間を耐用 年数とすることに対する合理性から

取扱いを明らかにしているのであり、対象が造作ではなく

これを類推解釈して建物において適用しても何ら問題は無いのではないかと

考える。

さらには、契約の相手方が地方公共団体であることから、

契約内容に租税回避等の恣意の入り込む余地はなく、仮に当社が

契約期間の延長を求めても認められない。

以上のことから、当初から建物の存続期間が明白である場合においては、

その存続期間を耐用年数として償却することに会計上合理性があり

本来の減価償却制度の趣旨から考えても問題は無いと考える。
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これに関する大阪国税局の回答は下記です。

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標題のことについては、下記の理由から、

貴見のとおり取り扱われるとは限りません。

なお、この回答内容は大阪国税局としての見解であり、

事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます。

(理由)

減価償却資産については、減価償却資産の耐用年数等に関する省令において、

その耐用年数(以下「法定耐用年数」といいます。)が定められています。

また、法人税法施行令第57条《耐用年数の短縮》では、一定の事由に

該当する場合に、納税地の所轄国税局長の承認を受けたときは、

減価償却資産の使用可能期間を法定耐用年数とみなすことを定めています。

この「一定の事由」については、同条第1項第1号から第6号まで

及び法人税法施行規則 第16条第1号から第3号まで《耐用年数の

短縮が認められる事由》に掲げられており、いず れも減価償却資産自体の

使用可能期間が法定耐用年数よりも著しく短くなるという事由が

現に発生しているような場合に限って承認される趣旨であると解されます。

しかしながら、借地契約の契約期間が法定耐用年数より短いことは、

法令上のいずれの事由にも該当しないため、

同条に基づく短縮の承認申請は認められません。

なお、耐用年数の適用等に関する取扱通達1‐1‐3《他人の建物に

対する造作の耐用年数》は、他人から賃借した建物に対して行った造作

についての取扱いであり、建物そのものをこれに準じて取り扱うことは、

相当でないと考えられます。
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個人的には「耐用年数の適用等に関する取扱通達1‐1‐3〜は、

他人から賃借した建物に対して行った造作についての取扱いであり、

建物そのものをこれに準じて取り扱うことは、相当でない」という部分に

疑問も感じますし、「貴見のとおり取り扱われるとは限りません」という

表現にも疑問を感じます。

では、どういう事実関係であればOKなのでしょうか・・・???

そこは全く見えない部分になりますし、

実際に裁判等で争えば勝てる要素もあるとは考えています。

しかし、この文書回答事例があることも事実なので、

耐通1−1−3の内容を拡大的に解釈しないことも必要となります。

ここは意外と盲点になっている部分ですので、是非、覚えておいてください。

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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