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2016.06.09

定期借地権の保証金に係る債務控除額

※2015年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「定期借地権の保証金に係る債務控除額」ですが、

平成19年4月26日の裁決を取り上げます。

相続税の申告において、賃貸物件に係る預り保証金がある場合、債務控除を

することができますが、全ての場合において、元本相当額の控除が可能な訳

ではありません。

本件は定期借地権による賃貸という事例ですが、この債務控除につき、

国税不服審判所は下記と判断しました(認定事実を含む)。

○各保証金は、各借地権者がいずれも無利息で本件被相続人に預託したもの

であり、契約期間終了後には、各保証金から各借地権者の本件被相続人に

対する残存債務を差し引いた残額が返還される契約となっていた。

○本件各契約は、本件相続開始日において、いずれも解約されておらず、

別表3及び別表4の「承継した相続人」欄各記載のとおり、本件A契約に係る

保証金及び本件G契約に係る敷金の各返還債務を請求人Jが、本件B契約、

本件D契約及び本件E契約に係る各保証金の返還債務を請求人Hが、本件C契約

及び本件F契約に係る各保証金の返還債務を請求人Kがそれぞれ承継した。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/73/24/03.html

http://www.kfs.go.jp/service/JP/73/24/04.html

○請求人らは、本件申告書、本件修正申告書及び本件再修正申告書において、

別表3記載の各保証金及び別表4記載の敷金(以下、併せて「本件各保証金等」

という。)の元本額合計1,350万円を控除すべき債務の金額として本件相続に

係る相続税の課税価格を算定した。

○相続税は、財産の無償取得によって生じた経済的価値の増加に対して

課される租税であるところから、その課税価格の算出に当たっては、取得財産

と控除すべき債務の双方について、相続開始時において、それぞれ現に有する

経済的価値を客観的に評価した金額を基礎とするのであるが、債務については、

その性質上客観的な交換価値がないため、交換価値を意味する「時価」に

代えて、その「現況」により控除すべき金額を評価する旨規定しているもの

と解される。

○控除すべき債務が弁済すべき金額の確定している金銭債務の場合であっても、

その弁済すべき金額が当然に当該債務の相続開始時における消極的経済価値を

示すものとして課税価格算出の基礎となるものではなく、金銭債権について、

その権利の具体的内容によって時価を評価するのと同様に、金銭債務について

もその利率や弁済期等の現況によって控除すべき金額を個別的に評価しなけれ

ばならないのであり、控除すべき債務の金額は必ずしも常に当該債務の金額と

一致するものではない。

○無利息で預託されている金銭債務(以下「無利息債務」という。)であれば、

これを承継した相続人は、通常の利率による利息相当額の経済的利益を弁済期

が到来するまでの期間享受することとなり、その享受する経済的利益の相続

開始時における現在価値に相当する額だけ相続又は遺贈により取得した経済的

価値の減殺要因が小さくなることから、無利息債務の相続開始時の評価額は、

通常の利率と弁済期までの年数から求められる複利現価率を用いて相続開始時

現在の経済的利益の額を計算し、無利息債務の元本額からこの経済的利益の額

を控除した金額とするのが相当である。

○これを本件についてみると、本件各保証金等に係る返還債務は、本件相続

開始日現在において弁済期未到来の無利息債務であり、その弁済期は、別表5の

「②未経過期間」欄記載のとおり、各保証金については44年から47年後であり、

敷金については16年後であると認められる。

○本件相続開始日現在における通常の利率を基準年利率(3.0%)とすることに

ついて、請求人らは争わず、当審判所も相当と認める。

○本件各保証金等に係る控除すべき債務の金額は、本件各保証金等の元本額

から無利息による経済的利益の額を控除した金額とするのが相当であり、

具体的には、本件各保証金等の元本額に、本件相続開始日現在における

基準年利率(3.0%)の各未経過期間に対応する複利現価率を乗じて算出した

金額となる。

○本件各保証金等に係る控除すべき債務の金額は、原処分庁が主張する別表5

の「④控除すべき債務の金額」欄記載の各金額と同額となり、本件各保証金等

の元本額を控除すべき債務の金額とすることはできないから、この点に関する

請求人らの主張には理由がない。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/73/24/05.html

参考URL

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hyoka/kaisei/140701/index.htm

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hyoka/kaisei/140701/pdf/02.pdf

いかがでしょうか?

先日、ある納税者の方から単発のご相談(相続税申告後)があったのですが、

当該申告書では、上記と全く同様のミスをしていました・・・。

「預り保証金イコール元本相当額で債務控除」と考えてしまうと、修正申告に

伴う納税額も多額になるケースがあります。

地主さん等の不動産オーナーは土地を守るため、定期借地権を利用することも

ありますが、その場合の債務控除には細心の注意を払う必要があるのです。

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