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2015.12.04

国税が重要判決としている重加算税基準とは?

本ブログ 「国税内の重要判決情報」にも書きましたが、
国税庁課税部審理室から課税庁職員向けに年に1回
共有されている「調査担当者のための「重要判決情報」
というものがあります。

なお、この情報はTAINSで閲覧可能です。
「重要判決情報」と検索し、税区分を「その他」
に絞って再検索すれば過去分も見ることができます。

昨年6月に出された(最新の)重要判決情報で注目すべきは、
「従業員による仮装隠ぺい行為がなされた場合の重加算税の賦課の可否」
(法人税、金沢地方裁判所 平成23年1月21日判決)です。

結果としては、国税側勝訴の判決なのですが、
従業員の不正に関して、法人の重加算税とされる
判断基準を明示しているところがポイントです。

本ブログでは繰り返し、従業員がした不正が
法人の重加算税になるのか、ならないとすればどこが
論点なのか書いてきましたが、国税側がどこが
論点と考えているのか、非常に参考になります。

裁判事案の内容は下記になります。

(1)原告X社は、運送業を営む法人であり、その代表者Aが
 ワンマン経営を行う同族会社であるところ、Aの娘であり
 同社の取締役であるBが、運送契約等の管理及び経理担当を行う
 業務部の部長を兼務し、また、Aの甥であり同社の取締役で
 あった従業員Cが、配送部の業務を担当していた。

(2)課税庁の調査において、配送部の業務を一任されていた
 Cが運送賃(収入)の一部を横領していた事実が発覚し、
 横領額がX社の申告額に計上されていないことが判明した。

(3)課税庁はこの横領された金額が、X社の益金の額に
 算入すべきものであり、また本件行為はX社の行為と同視できる
 ものとして更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。

判決の内容を踏まえて、大事なのは国税側がポイントとしている
論点です。なぜなら、国税が年に1回しか発表しない、
しかも、たった数個の重要判決として取り上げている判決ですから、
国税が何を基準にしているのかを知るべきです。

同資料の中には、下記のように示されています。
(判決内容ではなく、国税側が示した見解です)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

法人の従業員による仮装隠ぺいがなされた場合の重加算税の賦課が
適法とされた裁判例の多くは、仮装隠ぺい行為の主体が、
法人の経理責任者及び経理担当者の場合である(注)ところ、
本判決では、仮装隠ぺい行為の主体が経理責任者以外の従業員で
あっても、納税者である法人の仮装隠ぺい行為と同視できる場合に、
納税者である法人の監督責任といった有責性が判断要素となることが示された。

すなわち、これまで、第三者の仮装隠ぺい行為を納税者である
法人の仮装隠ぺい行為と同視するための理由付けとして、
その行為の主体が「経理責任者又は経理担当者のように、
納税者である法人の申告行為に重要な関係を有する部門に属し、
相当な権限を有する地位に就いている者である場合には、
その行為者の地位、権限及び仮装隠ぺいの目的等に着目した判断が
示されているところ、本判決は、「経理責任者等以外の従業員」
のように、申告行為等を含め業務執行に当たりそれほど権限を
有していない者である場合には、納税者である法人の監督責任
といった有責性に着目した判断がなされたものである。

具体的には、(中略)従業員に与えられている権限、業務の管理部署や
管理の実態、法人の従業員に対する監督状況等の認定事実に基づき、
A又は契約管理をしていた業務部が、従業員の横領行為を防止するために
相当な注意義務を尽くしていないといったことが判断要素とされている。

以上のとおり、本判決は、仮装隠ぺい行為の主体が従業員である場合の
国税通則法68条1項の適用に当たっては、「納税者である法人が
相当の注意義務を尽くせば、役員や従業員が行おうとしている
仮装隠ぺい行為を認識することができ、法定申告期限までにその是正や
過少申告防止の措置を講ずることができたか否か」ということを規範として、
「納税者本人の仮装隠ぺい行為と同視できる」と判断された事例であり、
実務の参考とされたい。

(注)仮装隠ぺい行為の主体が、法人の経理責任者等である場合の
  裁判例として、平成13年7月26日大阪高裁判決参照。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

つまり、国税側が「従業員の不正=法人の重加算税」
とする基準をまとめると、

①経理担当者が行った不正は基本的に重加算税

②他の従業員の場合は、
a.従業員に与えられている権限
b.業務の管理部署や管理の実態
c.法人の従業員に対する監督状況
等から判断する

ということです。

ここで大事なことは、国税側の基準・見解を
事前に知っておくということです。

もちろん、裁判にいけば関係ないのかもしれませんが、
税務調査の現場においては、「この通り、
国税の内部資料では判断基準はここと書いてますよ!」
と主張することで、従業員の不正が重加算税で
なくなる交渉のやり方が存在するということです。

何の判断基準・ポイントもなく、いくら
「重加算税ではない」と主張しても意味がありません。

上記のように、国税側の判断基準をピンポイントに
反論・主張することが大事なのです。

 

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

※2014年2月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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