2016.05.11

反面は補完調査!?

※2014年11月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

私は国税の内部規定を読むのが好きで、
TAINSで内部規定が公開されるたびに
印刷して詳細まで読んでいます。

「法人課税事務提要(事務手続編)平成25年6月」を
読んでいて面白い表現を見つけました。「補完調査」です。

「補完調査は、反面調査、支店調査、金融機関の預貯金等の
調査及び法人の代表者の所得等の調査であり、統括官が
その実施の要否を決定した上で、調査担当者に
実施を指示又は他署にその実施を依頼する。」とあります。

この表現からわかる通り、反面調査は
本来の税務調査を「補完するため」のものということです。

また、下記のように明確に記載があります。

「1.反面調査
取引先等に対する反面調査の実施に当たっては、
その必要性と反面調査先への事前連絡の適否を
十分に検討する。また反面調査である旨を
取引先等に明示した上で実施することに留意する。」

ここにいう必要性とは、質問検査権の条文が根拠です。

国税通則法第74条の2
国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、
所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する
調査について必要があるときは、・・・(以下、略)

法律規定上、反面調査を含めた質問検査権の行使には
「必要性」の要件がありながらも、その内容や定義は
はっきりしないのが現実です。

反面調査については、事務運営指針に下記の
記載しかないというのが、非常に残念な事実です。
(上記と同じ内容・記載です)

「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/index.htm

「(6) 反面調査の実施
 取引先等に対する反面調査の実施に当たっては、
その必要性と反面調査先への事前連絡の適否を十分検討する。」

一方、違う国税の内部規定(ネット上では公開されていませんが、
情報公開法で開示請求は可能です)の中には、
このような記載があり、反面調査に対する抗弁・反論
する根拠には、うってつけのものがあります。

「税務調査手続等に関するFAQ」
(職員用、平成24年11月 国税庁法人課税課)

問1-11 無申告行政指導を実施する前に
     銀行調査を実施することは可能か。
(答)
銀行調査は、質問検査権の行使を伴う反面調査として
行うこととなるが、反面調査については、取引先等の
反面調査を実施しなければ納税義務者の適正な課税標準等を
把握することができないと認められる場合に限り行うこととしている。

また、その実施時期については、納税者本人への調査着手後に
行うことが一般的であるが、税務調査は納税者本人に対して
一定の負担を求めるものであるところ、そもそも税務当局が
保有する情報のみでは、納税者本人に対する質問検査等の
要否の見極めが困難な場合もあり、そのような場合には、
反面調査先の負担の程度等も勘案した上で反面調査を先に実施し、
納税者本人への質問検査等の要否を判断することもある。

このような反面調査の位置付けを踏まえ、法人課税部門においては、
無申告法人について調査や行政指導の要否を判断するに当たり、
稼働状況の確認のために必要な場合に限り、反面調査として
銀行調査(銀行取引の照会)を行っても差し支えないこととする。

この記載を読めば、反面調査はあくまでも
「補完調査」であり、通常の税務調査で把握することが
できない場合にのみ実施される「べき」行為である
ことがよくわかると思います。

いまだに、安易に実施される反面調査ですが、
上記を知ったうえで、反論・抗弁の材料にしてください。

 

※ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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