2016.07.25

印紙税調査の謎を解く

※2015年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

本メルマガでは、年に1、2回程度は
印紙税調査について情報提供していますが・・・

印紙税調査は他税目の調査とあまりに相違があり、
「対応方法がわからない」税理士が多いようです。

まず、もっとも不可解な過怠税。これについては、
本メルマガで去年10月22日に配信しました
Vol.371「調査で印紙を指摘されたら・・・
で詳しく書いていますので、そちらをご覧ください。

結論としては、悪質(使用済印紙の再使用や、
故意による不貼付など)ではない場合、
3倍の過怠税ではなく「不納付事実申出書」を提出して
実務上は1.1倍で納付することがほとんどです。

3倍か1.1倍か(印紙税法第20条1項か2項か)
は、調査の現場では明確な区分がありません。

もし「3倍」と指摘された際には、
「不納付事実申出書を自ら提出するので、
1.1倍になりますよね?」と主張してください。

また、印紙税調査のもっとも謎の部分は、
税理士法第2条において、印紙税は税理士業務の
対象税目から外されていることから、税理士は
印紙税調査の立会いができないことになります。

ですから、税理士への事前通知において
「印紙税」が通知されることはありませんし、
調査が結了する際の、調査結果の説明については
原則として印紙税部分は、納税者に対してのみ
行われることになりますので注意してください。

なお、印紙税調査だけ税理士が立会できない
ことに関しては、国税も弾力的に考えているようで、
調査官が税理士の同席を認めることもあります。
本当はダメだけど、調査官が税理士立会いの方が
楽だと考えていると思っていいでしょう。

この点よく聞かれるのですが、税理士が
印紙税調査の立会いをできないという事実から、
印紙税に関する経理処理をできないのか?
という疑問ですが、それは違います。

法律的には、税理士法第2条第2項の
付随業務の範囲内でできるものと解釈されます。

また、この点は実務上非常に大事なのですが、
印紙税に推計課税の規定はありません。
ですから、原則として、契約書・領収書などを
現物確認しなければ課税することはできないのです。

その一方で、課税文書が多い、事業所が多いなど
の理由により、税務調査においてすべての文書を
確認することは時間的・物理的にムリ、という
こともあるわけです。

このような場合の調査手法として、例えば
1年間のみの課税文書のうち、ある一定以上の
金額のものだけを抽出したり、ある事業所に
絞ってランダムチェックをするのが通例です。

その中で印紙相違や印紙の貼付がない文書の
割合などを算出して、3年分の印紙納付額を
推計することになります。

納税者にとっても事務負担が大変ですから、
推計課税ができない、とわかっていても
それにあえて応じることが必要になるわけですが、
だからといって、安易に調査官の推計額を
鵜呑みにする必要性はまったくありません。

推計課税に応じるかわりに、対象年数を短くしたり、
こちらで集計するなど、交渉は可能なのです。

あくまでも印紙税は推計課税できないという事実を
どのように主張根拠として用いるかが重要です。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。