2016.08.15

功績倍率3倍を超えない

※2015年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

よくある相談として「退職金を○千万円支給したいのですが
功績倍率をムリにでも上げないとその金額になりません。
調査で否認されないために、どうすればいいですか?」
という、退職金支給前の内容があります。

退職金を支給するときに、いくら支給したいから、
という逆算で、ムリに功績倍率を上げるのは危険です。

先日、OB税理士が講師のセミナーを受講してきたのですが、
その中で「功績倍率が3倍以内なら調査官は何も言わない」
という話がありました。

ここまで言い切れるかどうかは別にして、
感覚としては私もまったくその通りです。

逆を言えば、功績倍率3倍を超えるからこそ、
否認指摘の対象になるともいえます。

ムリヤリ黒字にするためなのか、役員報酬を無理に下げている
(極端な例では0円)ケースも数多く見ますが、
死亡や重病にかかれば、急に退職金を支給せざるを得ず、
その場合に、希望する金額の退職金が支給できない、
という事態に陥ることになりがちです。

功績倍率を3倍以内に抑えて支給額を最大化しようとすると、
算定基礎となる役員報酬を「最終月額」ではなく、
「最高月額」「平均月額」などにしようとするわけですが、
これも調査でモメる大きな要素となってしまいます。
(正直なところ、功績倍率を上げるよりは
こちらの方がスルーされる可能性は高いです)

またヒドいケースでは、以前からずっと役員報酬の額を
低く設定していたため、どんな計算方法を採用しても
功績倍率を抑えている限り、退職金がほんの少ししか
支給できないような法人も存在します。

ですから、基本的な前提として、退職金のことまで
考えて、役員報酬の設定をする必要があるのです。

役員報酬を過度に抑えることは、急な退職金支給に
対応できないリスクをはらむことにつながります。

さて、ここで強調しておきたいのは、税務調査で
「同業他社と比べられたら」絶対に負けるということ。

なぜなら、税務署がシステムから同業者の退職金支給額を
抽出し、その内訳(最終月額報酬・在任期間・功績倍率)
を調べたら、功績倍率は3倍を大きく下回るからです。

客観的に考えてみてください。

「最終月額報酬×在任期間×功績倍率」というのは、
支給「限度額」であって、どの法人も限度額まで
退職金を支給しているわけではなく、資金繰りの関係で、
限度額まで支給していない方が普通なのです。
(これは税理士が一番よくわかっているはずです)

以上から、功績倍率をムリヤリ上げて
退職金を支給してしまうと、

税務調査において退職金でモメる
⇒ 調査官が同業他社の退職金を抽出
⇒ 功績倍率の他社平均は3倍もいかない
(現実値は1~2倍の間になることが多いようです)

として、功績倍率が非常に低い設定にされ、
それを超える部分が過大とされてしまうのです。

このようなリスクをかかえてまで、
功績倍率3倍をムリに超える必要があるでしょうか?

顧問先の要望で、まず退職金の支給金額ありき
という状況は、よくあることです。

しかし、否認リスクを最小限にするためには、
前提として功績倍率を3倍以内にすることです。

退職金は否認されてしまうと、それだけで
数千万円になってしまいます。功績倍率で
戦っても負けるのですから、まず戦わないことです。

 

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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