• HOME
  •  › ブログ
  •  › 事業所得が赤字なら専従者給与は否認?
2016.11.14

事業所得が赤字なら専従者給与は否認?

※2016年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

個人事業主に対する税務調査で、専従者給与が高いから
といって否認指摘を受けるのは理解できますが・・・

事業主の事業所得が赤字だからという理由で、
「専従者給与の一部を否認」ヒドい場合には、
「赤字の年は専従者給与を認めない」などと
否認指摘を受ける事案まで実際にあるので困ったものです。

ここまでいかないにしても、最近公開された裁決事例の中で、
事業所得が赤字で、実質的に給与所得から専従者給与を
支払っていたとして、専従者給与を全額否認されて
争った事案があります。

「青色事業専従者給与の支払に充てられた資金の原資が
請求人の給与収入から請求人の事業に振り替えられたもの
(事業主借)であることを理由に、青色事業専従者給与の
支払額全額が、請求人の事業所得の金額の計算上、
必要経費に算入できないとした原処分庁の主張を
排斥した事例」(平成27年4月13日裁決)

http://www.kfs.go.jp/service/JP/99/07/index.html

この裁決事案では、医者が勤務している給与収入が
事業収入の4倍あり、事業所得が赤字になっていること、
また仕訳上、事業主借勘定に振り替えられた現金から
専従者給与が支払われていることを根拠として
否認されたものです。

結果としては、類似同業者の専従者給与額の平均から、
実際の支給金額の一部は必要経費として認められません
でしたが、大筋としては納税者が勝っています。

専従者給与とは、あくまでも労働の対価なので、
支給した結果として事業所得が赤字になったとしても、
また実質的に他の所得から填補されていたとしても、
その額が適正である限り、必要経費なるのは当然です。

しかしその一方で、冒頭の否認指摘や本裁決事例のように、
労働の対価として適正かどうかではなく、
「事業所得が赤字だから」という意味不明な根拠で
否認指摘をされる例が後を絶ちません。

裁決事例の中で不服審判所の判断として、
「本件給料が事業主借勘定に振り替えられ事業用とされた
現金から支払われているところ、所得税法第57条は、
事業収入以外から事業に流入した資金により
青色事業専従者給与が支払われた場合に、当該支払を
必要経費に算入することを認めない旨を規定したものと
解するのは相当ではない。」と明示しています。

まさにこの専従者給与の否認事例は、
国税の拡大解釈以外の何物でもありません。

上記のような否認指摘を受けた場合は、
所得税法第57条の拡大解釈を許さないことを主張し、
本裁決事例を提示すべきです。

なお蛇足になりますが、事業主の事業所得が赤字の場合、
青色専従者の配偶者控除を適用できます。
(事業主が扶養される側で専従者が扶養する側)

給与を払っている人が、もらっている側の
扶養に入るというのは感覚的におかしいと感じる
かもしれませんが、法的には要件を満たしています。

この点を勘違いされている方が非常に多いので、
確定申告では気を付けて処理してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。