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2018.01.15

不動産を購入した場合の按分基準の盲点(その3)

※2017年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「不動産を購入した場合の按分基準の盲点(その3)」ですが、

これに関する不動産鑑定士からの参考情報をお届けします。

2回に渡り、「不動産を購入した場合の按分基準の盲点」を

お届けしましたが、上記のメーリングリストで、

ある税理士さんから、こんなご質問がありました。

(ご質問)

西本先生、お世話になります。

税理士の〇〇です。

固定資産税評価額に関して教えてください。

不動産を購入した場合、売買契約書に購入金額の土地建物の内訳がなく、

一括表記されていることが多いです。

この場合、固定資産税評価額で按分することが多いと思うのですが、

過去の裁決を見ると、評価替えの年以外に購入した場合、

直近の評価額と購入後最初の評価替えの年の評価額を比較し、

差額を按分計算して加味した金額で土地建物の按分計算をすることが

合理的とされています。

しかし、例えば、評価替えは平成27年であり、

平成28年に購入という物件の場合、次回の評価替えは平成30年であり、

申告時点で、平成30年の評価額が存在せず、

平成27年と平成30年の差額が計算できないので、

裁決で適正と判断している計算が不可能となります。

これはどのように考えたら、いいのでしょうか?

税理士 〇〇〇〇

(税務特化型不動産鑑定、不動産鑑定士 西本理英の回答)

〇〇さん

ご質問ありがとうございます。税務特化の西本です。

仲介業も経験している私からいうと、仲介業者は税込価格として

一括表示すれば購入者側の総予算把握(キャッシュをいくら

用意すればよいか)に足りるので、内訳が明示されないのはよくある話です。

そのような場合に、〇〇さんのおっしゃる裁決事例のような

時点修正的な按分計算が可能かというと、結論からいうとまず無理です。

<固定資産税評価額算出のしくみ>

【土地】

土地については、鑑定士が算出する3年ごとの評価替えのほか、

一応時点修正というものを行っております。

この時点修正は、地価の下落期には鑑定士が関わることが多いのですが、

各自治体の予算の都合があったり、一律な定めはなく、

各自治体の固定資産税課職員が独自に計算したりしています。

従って、評価替えと別途微妙に評価額は毎年変動しているのですが、

年度が改まる前(発表前)にこの数字を教えてくれる自治体は

ないかと思います。

【建物】

建物は経年減点補正率表に従っているので、将来の変動がほぼ読めますが

これも再調達価格の変動がないものとした場合です。

(H27の評価替えでは、建築費の高騰を受けて、再調達価格が

上昇した結果、経年にもかかわらず評価額がむしろ上がったという

物件も多かったです。

このような場合もあるので100%とはいえません)

⇒期中で取引した場合、次の評価額を正確に予測して按分計算に

考慮することはまず無理ということになります。

<国税の立場>

土地建物の按分に関してまず、国税の基本的な立場はこれです。

No.6301 課税標準

[平成28年4月1日現在法令等]

建物と土地を一括譲渡した場合の建物代金

Q
建物と土地を一括譲渡した場合で、建物代金が区分されていないときは、

建物代金はどのように計算したらよいでしょうか?

A

土地とその土地の上に存する建物を一括して譲渡した場合には、

土地の譲渡は非課税ですので、建物部分についてのみ課税されます。

この場合、譲渡代金を

・譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分

・相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分

・土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、

支払利子等を含みます。)を基にした按分

などの方法により土地と建物部分に合理的に区分する必要があります。

なお、それぞれの対価につき、所得税又は法人税の土地の譲渡等に

係る課税の特例の計算における取扱いにより区分しているときは

その区分した金額によることになります。

(消法令45 消基通10-1-5)

このように、特に固定資産税に偏っているということはないですね。

ただ、固定資産税は同一の機関が出している価格なので、

同じ観点での比較ができるのと、基本的にどの物件でもついているので

使いやすいという利点はあります。

また、一般に仲介業者も聞かれたら固都税按分で答えると思います。

(但し、直近(過去)の固都税評価額であって、将来の評価額は考えません)

<ではどうするか>

裁決ではたまたま次の評価替額が把握できたにすぎないと考えます。

(1)土地や建物の時価に変動が大きくない場合

一般実務では、直近(取引年度)の評価額で按分計算されており、

税務職員もあまり次の評価額との按分を意識しないケースが多い。

→直近数字をそのまま使用する。

大抵はこれで問題ないように思います。

ですが地価の変動が著しいかは、なかなか期中ではわからないと

思いますので、将来的に蓋を開けてみて以下(2)のように

指摘されるリスクは残りますね。

(2)時価の変動が著しい場合や、築年が経ちすぎた物件の場合

例えば去年の大阪市中央区商業地の路線価は、1年で1.3〜1.5倍程度と

大きく変動しています。(そのほか京都市中心商業地や東京の

高度商業地等も)

このような場合、後々調査の時点で「直近数値採用は適切でない」と

言われるケースはあるかと思います。

また、建物について、築年の割に収益を大きく生んでいるような

賃貸物件の場合、固定資産税で把握すると不合理とみなされる

ケースも多いです。

さらに、ボロボロなのに固定資産税で把握すると現価が

当初の20%以下にはなりませんので、却って固定資産税で把握すると

納税者不利になる場合もあります。

→時価の原点にたちもどり、合理的といえる数字を使用する

(建物の構造等から把握、鑑定を利用するなど)

<結論>

・固定資産税による按分はあくまで考え方の一つに過ぎない。

(他の方法と併用して考えてみてはどうか。)

・評価替えに伴う時点修正を行うにしても、その変動が

それほど大きくなければ、修正を行わなくても容認される可能性はある。

このため、当該年分の固定資産税による按分をベースとして考え、

問題が少なければその方法を採用すればいいですし、

時点修正を行わないと問題が大きい場合(将来的なリスクも含む)は

他の方法を併用して、補正するか鑑定評価を行うなどの対策が必要でしょう。

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税務特化型不動産鑑定株式会社

西本 理英

〒108-0074
東京都港区高輪3-25-23 京急第2ビル6階

TEL:03-6450-4758
FAX:03-6450-4759
http://kantei.tax/
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以上が西本からの回答です。

正直なところ、税務にも精通している不動産鑑定士は

非常に少ないのが実情です。

相続はやらないという税理士はいるかもしれませが、

「顧問先が不動産を持っていることはない」

という税理士はいないでしょう。

無償返還、地代の設定(相当の地代、通常の地代)、借地権などの

権利関係が微妙になっているケースもあります。

今回のテーマのような按分計算の問題もあります。

いずれにせよ、税理士であれば、不動産の問題を回避することは

できませんので、是非、下記メーリングリストをご活用頂ければと

思います。

私が言うのもなんですが、非常に勉強になると思います。

「税務特化型不動産質問会」

http://kantei.tax/question/index.html

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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