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2018.09.05

マッサージ師への支払いが給与とされた事例

※2018年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「マッサージ師への支払いが給与とされた事例」ですが、

上記告知でご紹介した裁決(平成12年2月29日)を取り上げます。

まず、本題の前に私が電車内で見つけた求人広告に

記載されていた内容の一部を抜粋します。

〇給食業務責任者募集

〇仕事内容:東京都交通局の食堂施設の給食業務の賄い人

〇契約:給食業務受託契約(個人事業主として契約)

〇就労地:都営バス千住営業所

     6:00~16:00(休業:日・祝日・隔週土)

     都営バス品川営業所

     6:30~16:00(休業:日・祝日・隔週土)

これは一般財団法人東京都営交通協力会さんの求人広告なのですが、

給与ではなく、報酬’(外注費)であることを前提にしたものです。

ここは私の推察ですが、「勤務地」ではなく、「就労地」、

「休日」ではなく、「休業」という表現をしていることも

気をつかっている部分かと思います。

ただし、この実態はどうなのでしょうか?

詳細が書かれていないので、確定的に言えませんが、

時間的拘束、空間的拘束もありそうです。

仕事の内容からして、一定の指揮監督命令下にも置かれそうです。

仕事に使う器具は自分で持ち込みということもないでしょうし、

貸し倒れのリスクもないでしょう。

これらは私の推察ですが、実態は給与である可能性も高いでしょう。

いずれにせよ、このようなことは世の中のあちこちで起きているのです。

その1つの事例がマッサージ師に対する支払いです。

この事例で締結されていた業務委託契約書に書かれていた内容は

下記のとおりです。

〇甲は乙に対して、甲の顧客に対するマッサージ業務を委託し、

乙はこれを実施する。乙は甲の指示に従い、甲のサービス向上を

目的とした業務を誠実かつ健全に遂行する。

〇営業時間は平日午前10時より午後8時、日曜祝日は休業とし、

変更については、甲乙協議する。

〇業務委託料は、マッサージの技術、経験を基に、15分又は30分の

クイックマッサージコース及び20分又は60分のベッドマッサージコース

の4コースの施術内容別に定める。なお、支払は、15日締めの当月未払い

及び月末締めの翌月15日払いの月2回とする。

〇甲は、乙が甲の営業方針及び業務規則に従わない場合、

本契約を即時解除することができる。乙が契約解除をする場合は、

2週間前に甲に通告し、これに反する時は、ペナルティーとして、

業務委託料の2割を差し引くものとする。

〇甲は、マッサージ業務における一切の顧客からのクレーム、

トラブル及びそれらに関する一切の損害賠償責任に関して責任を負う。

〇業務時間は、早出、遅出出勤を隔日とし、早出出勤は午前9時30分に

入店、清掃を行い、午後6時に業務を終了する。遅出出勤は午前12時までに

入店し、午後8時に業務終了とするが、業務終了時間直前の顧客に対しては、

その業務終了までとし、閉店間際の店内の後始末は全員で行う。

服装は、ポロシャツを制服として店より貸与するが、ズボン、

サンダルは各自で用意し、常に清潔を保つこと。食事休憩は、

随時、手の空いた時間に取り、原則として、業務中の外出を禁じる。

全てを記載することはできないので、一部のみを取り上げますが、

国税不服審判所は下記と判断しました。

〇マッサージ業務を遂行するに当たっては、営業時間、施術種目(コース)

及び施術料金、出退勤時間等を含めた業務時間、服装、休憩

及び業務上の心得等の業務規則が定められ、営業方針・業務規則に

従わない場合には請求人に契約解除権が認められており、

マッサージ師各人は、この定めに服して、請求人の賃借する

施術所内において、請求人所有の設備備品を使用し、

業務に従事している。

〇出張業務はなく、マッサージ業務の遂行場所は請求人の賃借する

施術所に限定されている。

〇顧客が支払う施術代金は、請求人に入金され、請求人が支配管理し、

その後、請求人が各マッサージ師に対し、本件外注費を支払っている

ことが認められる。

〇そうすると、マッサージ師は、請求人の指揮監督ないし組織の支配に

服して、場所的、時間的な拘束を受けて継続的に労務を提供し、

マッサージ業務に当たり独自に費用を負担していないものと

認められるから、請求人とマッサージ師は雇用関係があると

いうことができる。

〇本件では、いわゆる出来高払制に基づいて請求人が報酬を支払っていると

認められるが、かかる報酬支払形態であっても、使用者の指揮命令に

よって労務を給付する以上、雇用関係があるというに妨げない。

〇この点について、請求人は、マッサージ師は自己の危険と計算において

独立して営んでいるから事業者に該当する旨主張するが、

顧客に対する事故の責任負担については、本件契約書の記載によれば、

請求人が負うものと認められ、また、マッサージ師が請求人の施術所に

おけるマッサージ業務の宣伝企画に参画しているとしても、

このことのみをもって、独立した事業者であるということはできない。

〇請求人の答述によれば、施術所に在籍しているマッサージ師22名のうち、

正規の資格があるのは僅か3名のみであり、大半が無資格のマッサージ師

であると認められ、そのような者が事故における責任を負担して

独立してマッサージ業を営んでいると解することは不合理である。

〇以上によれば、マッサージ師が自己の危険と計算において独立して

営んでいるとはいえない。

このように、「給与なのか?外注費(報酬)なのか?」という論点は

問題になりやすいのです。

特に昨今は社会保険料負担の問題からこのテーマに取り組む会社も

増えてきています。

ただし、そもそもの趣旨が「社会保険料の負担」なので、

最も重要な「税務上の観点からの働き方」ということが

おざなりになっていることがよくあります。

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