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2017.03.29

マッサージ師に対する支払いは給与?外注費?

※2016年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「マッサージ師に対する支払いは給与?外注費?」ですが、

平成12年2月29日の裁決を取り上げます。

(ここから)
平成28年9月30日の産経新聞で下記と報道されています(一部抜粋)。

消費税法違反罪などで告発されたのは、大阪市東住吉区の警備会社

「スカイ警備保障」と同社の中村信弘社長(50)=八尾市。

関係者によると、同社は平成23〜26年、従業員の給料を外注費に仮装し、

控除される消費税額を過大計上する手口で消費税計約2500万円を

脱税したとされる。

重加算税を含む追徴税額は計約3400万円とみられる。
(ここまで)

税務上の外注費/給与の区分・判定基準PDF

この事案は「仮装による脱税」とされた事案ですが、

悪意は無くとも、意識的に似たような状況に作り出している事案は

他にもあると推察されます。

もちろん、給与か?外注費か?は事実認定の問題ですので、

それが意図的に作り出された状況であっても、外注費と言える状況であれば、

問題はありません。

今日取り上げる裁決は外注費が給与と判断された事例ですが、

国税不服審判所は下記と判断しました。

〇業務委託契約書には、甲をGマッサージ代表者Fとし、

乙をマッサージ師個人として署名、押印がなされている上、

要旨次のとおり記載されている。

・甲は乙に対して、甲の顧客に対するマッサージ業務を委託し、

乙はこれを実施する。乙は甲の指示に従い、甲のサービス向上を目的とした

業務を誠実かつ健全に遂行する。

・営業時間は平日午前10時より午後8時、日曜祝日は休業とし、

変更については、甲乙協議する。

・業務委託料は、マッサージの技術、経験を基に、15分又は30分の

クイックマッサージコース及び20分又は60分のベッドマッサージコースの

4コースの施術内容別に定める。なお、支払は、15日締めの当月未払い

及び月末締めの翌月15日払いの月2回とする。

・甲は、乙が甲の営業方針及び業務規則に従わない場合、本契約を

即時解除することができる。乙が契約解除をする場合は、2週間前に

甲に通告し、これに反する時は、ペナルティーとして、業務委託料の2割を

差し引くものとする。

・甲は、マッサージ業務における一切の顧客からのクレーム、トラブル及び

それらに関する一切の損害賠償責任に関して責任を負う。

・業務時間は、早出、遅出出勤を隔日とし、早出出勤は午前9時30分に入店、

清掃を行い、午後6時に業務を終了する。遅出出勤は午前12時までに入店し、

午後8時に業務終了とするが、業務終了時間直前の顧客に対しては、

その業務終了までとし、閉店間際の店内の後始末は全員で行う。

服装は、ポロシャツを制服として店より貸与するが、ズボン、サンダルは

各自で用意し、常に清潔を保つこと。食事休憩は、随時、手の空いた時間に

取り、原則として、業務中の外出を禁じる。

〇マッサージ師各人は、採用の際、本件契約書に署名押印し、個々に契約を

交わしていること、同人らは、請求人の施術所施設において、マッサージ

業務を行うに当たり、本件契約書の記載内容に従っていることが認められる。

他方、各マッサージ師との間で業務委託関係があること自体は請求人も否定

していない。

そこで、この各マッサージ師と契約を締結した当事者が誰であるかについて

みるに、本件契約書に当事者として表記されている「Gマッサージ」は

請求人の屋号であること、また、Fは、請求人の実質的な代表者又は

代理人として行動していることが認められるところ、これらの事実に請求人が

マッサージ業務の営業主体であるとの上記認定を併せ考えると、マッサージ師

各人と本件契約書を取り交わして契約を締結したのは請求人であると推認する

のが相当である。

〇この点に関して、請求人は、本件契約書はマッサージ師の団体の内部規定

である旨主張するが、本件契約書の記載の形式によれば、これをかかる団体の

内部規定と解するのは不合理であり、また、一件記録を精査してもかかる

団体の存在を認めるに足りる客観的証拠はない。

〇以上に加えて、マッサージ業務を遂行するに当たっては、営業時間、

施術種目(コース)及び施術料金、出退勤時間等を含めた業務時間、服装、

休憩及び業務上の心得等の業務規則が定められ、営業方針・業務規則に

従わない場合には請求人に契約解除権が認められており、マッサージ師各人は、

この定めに服して、請求人の賃借する施術所内において、請求人所有の設備

備品を使用し、業務に従事していること、また、出張業務はなく、マッサージ

業務の遂行場所は請求人の賃借する施術所に限定されていること、顧客が

支払う施術代金は、請求人に入金され、請求人が支配管理し、その後、

請求人が各マッサージ師に対し、本件外注費を支払っていることが認められる。

〇そうすると、マッサージ師は、請求人の指揮監督ないし組織の支配に服して、

場所的、時間的な拘束を受けて継続的に労務を提供し、マッサージ業務に

当たり独自に費用を負担していないものと認められるから、請求人と

マッサージ師は雇用関係があるということができる。

〇なお、本件では、いわゆる出来高払制に基づいて請求人が報酬を支払って

いると認められるが、かかる報酬支払形態であっても、使用者の指揮命令に

よって労務を給付する以上、雇用関係があるというに妨げない。

〇この点について、請求人は、マッサージ師は自己の危険と計算において

独立して営んでいるから事業者に該当する旨主張するが、顧客に対する

事故の責任負担については、業務委託契約書の記載によれば、請求人が

負うものと認められ、また、マッサージ師が請求人の施術所における

マッサージ業務の宣伝企画に参画しているとしても、このことのみをもって、

独立した事業者であるということはできない。

〇さらに、請求人の答述によれば、施術所に在籍しているマッサージ師22名

のうち、正規の資格があるのは僅か3名のみであり、大半が無資格の

マッサージ師であると認められ、そのような者が事故における責任を負担

して独立してマッサージ業を営んでいると解することは不合理である。

〇以上によれば、マッサージ師が自己の危険と計算において独立して

営んでいるとはいえない。

〇請求人は、基本合意書及び協議過程書を根拠として、マッサージ師6名と

基本合意をし、マッサージ師の団体が営業主体となることを確認して、

その旨を平成8年5月14日の請求人の臨時株主総会で確認した旨主張し、

両文書は、マッサージ師6名の記憶に基づき、Fが平成10年11月29日に

作成したものである旨答述するが、原処分関係資料によれば、請求人主張の

6名のうち、Lは平成10年1月16日から請求人の施術所でマッサージ業務

に従事している者であることが認められ、また6名のマッサージ師が平成

8年5月当時、在籍していたことを裏付ける客観的な資料もないから、

両文書を直ちに信用することはできない。

社会保険料の負担等の影響から業務委託契約書を作成し、

外注費という認識で支払っているケースもありますが、

それはあくまでも事実認定の問題です。

契約書があれど、勘定科目を外注費で処理すれど、

給与に該当する事実関係であれば、給与と判断されてしまいます。

この点にはご注意を頂ければと思います。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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